マフィアの弾丸
(……安心しきった顔で寝やがって)
────いや。元を辿れば眠らせたのはこちら側の事情ゆえだが。
迎賓館を出てからつかず離れず、危害を加えるつもりだったのか否か。
追ってくる車輌が一台、不審だったのでしばらく様子見をしていたアーウェイだったが、
どうやら、
その気配に殺気は感じとられなかったため已むなく、逃してやることにしたのである。
すい、と少女の丸み帯びた頬を撫でながら、
────…先刻、車内に入ってすぐに伊万里を抱き寄せた記憶をおもい出しふたたび、
視線を少女の肢体へとおろしていく。
怪しい追跡者がいたから伊万里の顔を知らせないために、あぁする他なかったワケだけだが。
(今後、こーゆー状況が日常茶飯事になってきたらコイツは、……どーゆー顔すンだろうな)
さいあく、離れたがるか。
必要以上の束縛を嫌い、常に自由をもとめるコイツにとっておれらはただの
足枷に過ぎない。