マフィアの弾丸





 手持ち無沙汰になったアーウェイのごつごつとした指先は、

 暇そうにくるくる、
 足枕にいる彼女のみじかい髪の毛先を、意味もなく弄ばせて。



 (あーー…。これ目ぇ覚ましたら絶対ぇ、ぎゃんぎゃんうるさく問いただして来るパターンじゃねーか)



 伊万里は決して、
 勘付くのが遅いタイプの鈍感女ではない。




 ・・・・否、いまのは語弊があった。

 少々の天然気質やら世間知らずな面、もとい鈍臭さは、まぁまぁ────・・・あるにはあるが。



 普段は、自分たちといなければ、ごく平凡で、おっとりとした性格で。

 どこにでもいる『フツー』の20代半ばの女性という、上っ面であることには特段、変わりは無い。




 現に、────…彼女との初対面の折も、それを狙って(────偶発的ではあったが)已むなく接触した事実もぜんぶは否定できない節はある。



 しかし、伊万里に関しては完全に相手を見誤った。

 思いのほか聡く、柔軟な思考的人間の持ち主だったのである。



 隙があるようで、どうにも付け入る隙が見当たらない。


 一見、押しが弱いのか?というふうに観察してみたのだが割とそうでも無いらしい。

 応か否かは案外、はっきりしているし、
 直情的にアーウェイと口喧嘩をするわりには、冷静な面も兼ねそなえていることは
 人と(なり)を見ていてもよく分かる。



 ・・・・・恐らく、
 芯がしっかりしているためであろう。




 ────…それが
 海屋(かいおく) 伊万里(いまり)という、

 これまでに彼らが会ったことのない
 一風変わった
 人種だったのだ


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