マフィアの弾丸
何かを考えこむように動いた純銀いろの眼睛は、口語はこぼさずに
指先だけが意味深に、口元に充てられ、片眉は吊り上げられている。
スモークガラス越しに、流れる情景を視野にとり込んで、そして
意味もなくうつした目線は、やはり、どうやってしても
・・・・無意識に、
膝上にある少女の姿に傾いてしまうのだ。
コートに包まれながら、スゥスゥと肩を上下させて寝入る
小柄な肢体と、
うすく聞こえてくる淡い吐息。
紅は差していないにもかかわらず、薄く桃いろに染まった唇。
・・・・近づけて、触れて、壊したい、
激しく。
どこか懐かしい感覚と直感が、体感のなかで懐古感をにじませ、
同時に、
自ずから閉ざしていたトリガーを、危うく引いてしまいそうになる
感情の昂揚感。
流れくるクーラーの風が、やんわり、伊万里から絡め取った
ほろ苦くも甘い、匂いを自分に運びこんで。
その事実に、千切れそうにもなる動悸の激しさには、
さすがにアーウェイも、小さく舌打ちを溢すしかなかった。
(…厄介だな)