マフィアの弾丸





 猛烈な美しさは今日も健在だ。

 アーウェイさんの問いかけに、多少、吃りながらも
 なんとか、答えるのだけれど。



 傍に立っているだけでも絵になる、
 長身と体格と、外見。

 どのパーツをとっても、なんて、美麗なのかしら。なんて、


 近所のおばさんのような目線で彼を見てしまうのは、ゆるして欲しい。



 髪は水滴で濡れているにもかかわらず、ウェーブに外跳ねした状態を維持したままの、煌びやかな
 シルバーブルーのヘアスタイル。

 白皙(はくせき)の肌は、フェイスケアも、
 その軍人のように鍛え抜かれた
 肉体美も艶やかで、
 水が肌を弾けるように胸筋から腹筋までをなだらかに、
 滑っている。


 まさしく野生的ではあるのだけれど、
 言葉を失うほどに退廃美な(おもて)のせいで
 女性のようなきめ細かさを感じてしまう。



 ・・・・・あーー・・いいなぁ。

 やっぱりちょっと、憧れる・・・・・、




 「────あに見てンダよ」

 「……いや、」



 あまりにジィーー、と見つめすぎてか。

 スーツズボンのポケットから煙草を一本、とりだし唇に挟んだまま
 そう、訝しむようにジロリ、と私を睨んで心底、面倒そうに言ってのけた男。



 ・・・・・そんな動線すら、
 様になってるって罪なヤツだな。




 「き、れいですよねー…って。しみじみ。どうやったら、そんな、外見も肌もぜんぶも綺麗に」


 「お前には一生ムリだろ」


 「あ、何か手入れしたりとかしてるんですか?肌のケアとか、」

 「してねェーわ。オンナじゃねーっつの」

 「じゃあ、……なにしたら、そんな美形になん、」


 「持って産まれた才能」


 「えっ。マジメに言ってください本気で聞いてるんですから」



 けっこう、真剣に聞いてるのに。

 そんなふうに口をへの字に曲げ、不服だと申し立てをすると、アーウェイさんは。


 ダークレッド色の薄い唇から、「あーー…強いて言うなら、」と
 顎に指を据え、一瞬、────…沈黙の間を設けたかとおもうと、




 「女?」


 「……………っは?」

 「オンナ抱いたらスッキリすんだろ。ソレじゃねーの」


 「……………馬鹿にしてます?」


 「マジメに答えてんだろ」

 「…もっと実用的なこっ、」

 「ああ実践してやろーか?」

 「結構」



 ソファーの背凭れから乗り込むように、血色のよい筋立った腕がこちらに
 伸びて、肩に回しこまれたので「No!Stop it!!」と。

 煙草を口に挟んだままの近付いた、美しすぎるお顔に手の平を
 ビタン!と掲げ、丁重にお断りした。



 ・・・・・まったく。

 すぐソッチにもつれこもうとするの、どうにかなんないかな。


 しかも、結構な
 本意気の力付くだから毎回、毎回、断るのにかなりの
 エネルギーが消耗する。


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