マフィアの弾丸





 私の苦い返答に「…そうか」と。ひと言だけ返した彼は、かけていたサングラスを
 流れるような所作で取り外すと、



 その猛烈ばかりな美形の顔の整い具合が、惜しげもなく
 あらわとなって、対峙することになった。




 いや、ほんとに・・・・・何度、対面しても、
 妙に肩に力がはいる、




 浮世離れをした、人外レベルの、美の際限すらないだろう。と言わしめるような。



 もはや、的確な言葉が見つからないほど。




 オールバックにされた、絹糸のようなグレーブラックの、髪。



 宝玉のように濃い、闇色の双眼(アイズ)

 左右対称に、完璧に配置されているのに、まったく見劣りしない
 目、鼻、紅を差したような薄い唇。




 玲瓏たる美貌はもちろんのことであるが、人間わざでは到底、

 あり得ない美の彫像のような恰幅が、
 高級スリーピーススーツの上からでも、窺い知れる。




 手足は長く、足を組んでいる様すら拝みたおしたい長身であろうことは、
 容易に、想像がつくだろう。




 この容姿で、天才的にIQも高いという。

 「天は二物を与えず」ということわざがあるけれど、ありったけ与えられている感じ。




 ────うん、正しくはIQに関しては、
 不躾な髪散らかし男のほうが上回る頭脳らしいが…。



 それにしたって、




 (…きっと、この人が脱いだら、世の女性たちは喜んで抱かれに行くと、────…否、脱がなくても。か)




 ス、と下ろされた闇色の瞳とともに、伏せられた長い睫毛の、もっと奥、────…



 どこか甘さを含んで、
 その硝子(ガラス)水晶のような双眼に、反射した私を映したので咄嗟に肩がびく、ん。と吊り上がってしまった。




 きっと絶対、おかしくおもわれたと思う。



 ただ、伏せられた宝石のような両眼と、直に、目が合っただけで
 ビクビクしてるんだから、




 ────…そんなことを頭でひとり会話しつつ、




 シルバーブルーの髪の、異様に美麗な男に、言われた(言われた通り。とは語弊があるが、)そのまま。



 私は毎週の診察手順のごとく、ジャンパーを脱ぎ、

 フードの毛皮(ファー)で隠れていた、首元を彼の前に晒した。




 「…あぁ、先週よりは赤み引いてんな。だいぶマシになってきたか。……で?今は?どっか気になる、とかあるか」

 「ぁ…、……えっと。時々あせも、みたいな痒みが。ちょっとだけ」

 「ソレ前にも言ってたな。見た目は蕁麻疹(じんましん)とか湿疹(しっしん)みてぇに表面上出てるワケじゃねーんだが、……ちょっと顔見せてみろ、」

 「っ、」


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