マフィアの弾丸





 とくにイライラするでもなく。


 吸わず仕舞いに、口端に咥えていた煙草を、硝子(ガラス)テーブル上の灰皿に押しつけ
 ごつごつとした指先の関節でグニャり、ひねり潰す。



 そうしてゆったり、首を傾げ。

 こちらに宝石のような銀色の瞳を向けなおすと、




 「────で?もうしんどくはねェのか」

 「…………え?」



 ワンテンポ遅く。

 言葉の理解が遅れる私のことを理解してか。


 アーウェイさんは若干、片眉を吊り
 上げつつも、私が切りかえすまでの間を待ってくれているようだ。




 「あ、……あぁ、あの。
 休め、ましたおかげ様で。ゆっくり。
 ありがとうございました」

 「寝れてねーみたいだったからな。
 まぁ…、多少、強制的にクロロホルムを嗅がせたのは認めなくもねぇが」


 「……なんだやっぱり、薬の臭いだったんじゃん」


 「あ゛?なんか文句あっか」

 「いえっ。何も」



 やや気遣わしげに、低くも艶っぽい響きで、そう言葉にしたアーウェイさんの善意は
 有り難く頂戴するとして。

 そのことには
 素直にお礼を告げつつ頭を下げたものの、



 軍神のように引き締まったガタイの良さが際立つ、その肉体美を惜しげもなく、今、現状、私のまえに晒してる・・・・ってことを。



 このひと・・・、
 ・・分かっとるんだろうか?


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