マフィアの弾丸





 『ほんとにな』じゃないソレはこちらのセリフだコチラの。

 誰のせいでこうなった誰の。




 アーウェイさんからの、いつもたる、いつもの悪癖には口をへの字に歪めるも
 彼の上から退いたからだを、隣のシートにストンっ、と収め。



 ソファー下に落ちていた、黒の(高そうな)毛皮(ファー)コートも拾いあげると、「こちらもお借りいたしまして、」と、一応。

 一応ね?


 かるく払って折り畳んで丁重に返却した私の腕から
 雑に、自分のコートを取り上げた彼は、「あぁ、」と生返事をしながら背もたれに、ソレをそのままま引っかけ置いた。




 いや、え?雑だな。

 絶対そのコート、ブランド物じゃないか。




 ・・・・・・ところで、諸君。


 目の前の彼、
 まだ半裸なんですよね。




 ────なんて、そんな高低差の激しい心持ちでアーウェイさんから目線を外した私。


 すると、私たちのやりとりを静観していたカーフェイさんが一度だけ、くつりと笑った息遣いを
 しずかに、零して。



 妖麗に笑った気配に、ちょっと怪訝を深めた目を吊り上げた
 こちらの目線に合わせるべく。


 私を挟むようにして反対側に腰を下ろしたカーフェイさんの、
 す、と伸びた指の関節が私の頬をとんとん、とかるく叩いて「…何かあったか」と穏やかにワケを尋ねてきたのには、




 ・・・・・・咄嗟に。

 口を噤んでしまった。


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