マフィアの弾丸





 「………何。かって、」

 「…言いたくなければいい、べつに。無理強いはしない」




 食べるか?なんて、それまでのシリアス展開はそっちのけに、矢継ぎ早に
 目の前に置かれたアフタヌーンティースタンドを指したカーフェイさん。


 相変わらず、
 我が道をいくマイペース自由人の猛烈美丈夫さんだ。



 今日も、目も冴えるようなオールバックにされたグレーブラックの髪と、
 コートといっしょにバッチリ、決まったスリーピーススーツ姿。


 ・・・・・の、
 衿もとの(ぼたん)とネクタイは、なぜだか開いてる、そこから覗く白皙(はくせき)の素肌。

 着崩され、それだけのアクセントでも
 彼を気怠げな色っぽさで仕上げているまさしく、美の彫像である。



 いや、かなり年上だけど。

 なんなら、お父さん並みな落ち着きっぷりだし
 たぶん、私に見せる姿と外で見せてる姿もちがうんだろうけど。



 「…ぃ、いただき、ます。……」

 「あぁ」

 「ぇっ、ほんとに頂いていいんですか?」


 「おうおう好きに食べろや」

 「……あなたには聞いてません」

 「てンめっ、随分とカーフ贔屓しやがってコレ用意させたのおれだぞ」


 「それは、…ありがとうございます」



 あったく調子いいヤツだなオメェはよぉ。と、あたらしく咥えなおした煙草を、ぷらぷら唇で遊ばせながら
 私の返答に切り返してきたアーウェイさんは。

 そのまま、ぎし、とソファーに深く腰かけ横柄に、その肉体美を晒しながら
 「ん゛あぁ…」と唸り声をあげて天井を仰ぐ。


 これ以上は視界に収めていても、目に(ある意味で)毒なので、フイと
 視線を逸らし硝子(ガラス)テーブル上の洋菓子をせっかくなので、
 吟味することとした。


< 97 / 140 >

この作品をシェア

pagetop