神獣の花嫁〜いざよいの契り〜
「虎次郎様。わたくしのような者に頭を下げてはなりませぬ。
どうぞ、虎太郎様のように(ばば)とお呼びくだされ」

「なれど、母上の実の母君で在らせられるのは、可依様でございます。私がお祖母様とお呼びして、なんの障りがございましょうか。

兄上は生来、口の悪い方ですからね、お(ゆる)しください」

そう言ってわたくしの手を取り、連れ立って歩こうとなさる、虎次郎様のなんと麗しきことでございましょう。

わたくしは、果報者にございます。

「私が本日こちらに参ったのは、お祖父(じい)様へご報告をせねばならぬことができたからでございます」

「そのご様子は、吉報にございますね?」

「はい。お祖母様に先にお伝えしてもよろしいのですが……」

「ふふ、善き報せならばなおのこと。あの方と共にお聞きいたしましょう」

今は、この大神社(おおかむやしろ)で共に暮らす、尊臣様と。





       ── 終 ──

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