神獣の花嫁〜いざよいの契り〜
「では、明後日───十六夜(いざよい)を待てば良いのだな。解った。邪魔をした」

可依の返答を待たずに立ち上がった尊臣にふたたび平伏しながら、内心、不服に思う。

(他にも依頼があったら、どうするつもりだったのかしら)

だが、幸か不幸か、今現在、依頼はなかった。めずらしいことに。

月に一度しか行えないとしている夢占だが、うまく調整すれば三件までは承れる。
……その後、一週間はほぼ睡魔に襲われ、惰眠を貪ることになるが。

「ああ、お前───」

言い忘れたかのように声をかけられ顔を上げると、自らの額を人差し指で押さえながら、尊臣がニヤリと笑った。

「神に仕える者のくせに、変わった所に黒子(ほくろ)があるな」

てっきり名を問われるのだとばかり思っていた可依は、屈辱感と共に両手で額を覆った。
それを見届け喉の奥で笑うと、尊臣は今度こそ立ち去ったのだった。



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