クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
空を見上げると確かに今にも雨がザー! と降り出してきちゃいそうな灰色の雲がもくもくと漂って来ていた。

やばっ! 急いで帰らなきゃ!

きっとお母さん、私がもう家に帰ってると思ってこのメッセージ送って来たんだと思う。

「おーい、聞いてる?」

「あっ、うん! え、と、なんだっけ?」

「だから、俺の彼女に​────」

「ううん! 今日のところはとりあえず大丈夫! 雨降りそうだから、私もう家帰るね!」

とにかく、彼が元気そうで良かった!

くるりと彼に背を向けると、ちょうど頬ポタ…、と一滴の雨粒が落ちてきて、ダッシュで家まで走り出した。

***

ーーキーンコーンカーンコーン…

朝のホームルーム終了のチャイムが鳴り響くと教室内は一気に騒がしくなった。

それぞれの話題に花を咲かしながら、1限の準備を始めていく。

はぁ〜…、今日は朝から雨か…。

雨の日は気分も暗くなる気がする。

先月の席替えで窓際の1番最後の席になった私は、窓の外をため息混じりに眺めた。

「何ため息ついてんの!」

「わぁ!」

背後からやって来たのは友達の葉月(はづき)だった。

油断していたせいもあって変な声が漏れてしまう。

「あ、葉月。今日髪型可愛い!」

「でしょ〜」

葉月は将来美容師になるのが夢なだけあって、毎日ヘアアレンジして登校している。
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