クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
美意識が高くて、とても女子力が高い。

今日は、ハーフアップだった。

いいなぁ。私は毎朝ヘアアイロンで軽く寝癖を取るだけで精一杯。

同じことをやろうとしたところで、悲惨なことになる未来がよく見える。

「結乃もやってあげるよ!」

「えっ、ほんと!?」

「おそろいにしよ! 前向いてっ」

「やったっ」

大人しく黒板の方を向いて、背もたれから少しだけ背を浮かす。

肩上までの髪の毛を慣れた手つきですくわれて、形になっていく間。

いつか美容師になった葉月にこうやってやってもらう日が来るのかなぁなんて妄想をした。

その時はちゃんと料金払うからね!

「ねぇ、見て。あの人誰だろ?」

「めっちゃかっこよくない?」

「ほんとだ!」

急に騒がしくなった廊下。

視線を向けると1人の男子生徒が注目の的になっていた。

あれ…?

「…」

ジーと見ていると、やがて私はあることに気がつく。

あっ! あの人……っ!!

その男子生徒が、昨日の学校帰りに会ったばかりの“あの”男の人であることに気付き、目を見開いた。

歳近そうだな、とは思ってたけどまさか同じ学校だったなんて…っ!

やっぱり学校でも大人気なんだなぁ。
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