クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
胸元のボタンは上3つくらいは開けているし、ズボンもゆるゆる。

全体的にダラッと着こなしているはずなのにそれでも一際目を引いてしまうような魅力がある気がする。

「あ、宮瀬(みやせ)だ」

葉月がポツリと零す。

「宮瀬? 葉月、知り合いなの?」

「違う違う。最近4組に転校してきたんだよ」

「へぇ〜。転校生……」

それであの人気って、すごい……。

「4組は4階にあるから知らない人も多いんじゃないかな」

「あ~、なるほど…」

うちの学年は他の学年よりも人数が多いみたいで通常3クラスまでなんだけど4クラスある。

4組の教室だけはここから少し離れた4階にあるんだけど、美術室が4組の隣にあるから他クラスは美術の授業がある時だけ横切る感じ。

ちなみに1、2、3組は2階にあって4組とは距離があるから必然的に4組情報には疎くなっていた。

担任の先生の顔すらパッと浮かんで来ない。

葉月が眉をひそめて、コソッ、と言う。

「バト部の子が言ってたけど超クズ男らしいよ」

葉月の所属するバドミントン部は、情報通でこうやって葉月越しに何かの情報を耳にすることがよくある。

「クズ男?」
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