クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
「あっ、あの…っ!!」

教室に入ろうとしたその時、後ろから声を掛けられて、振り向くと1人の女子生徒が立っていた。

「あ…」

見知った顔だった。

昨日遊んでやろうかなーって思って誘ってあげたのに悪びれもせず断ってきた女…。

確か、西野……結乃って奴だ。

緊張しているのかスカートを握って、リスが迷い込んだかのように、気弱そうに突っ立っている。

そういえば結乃と初めて会ったあの日は、派手にやられた日だったな。

タイマン張ったはいいが、調子悪くて負けちまった日だ。

いつの間にか、道端で気失ってて気が付いたら、結乃がいたんだ。

ーーちょっと当てるね…っ

殴られた頬に、ご親切に保冷剤を当てられた記憶が頭にフラッシュバックする。

正直あの時。

ちょっと可愛いな、と思ったのは事実。

だからお礼がてら、キープにしてやってもいいかなーって思ったのに、俺の誘いに喜ばしい顔ひとつしなかったので癪に触った。

ハグまでしてやった、ってのに。

あの時の不快感は1晩経ってもよく覚えていた。

ーーううん! 今日のところはとりあえず大丈夫! 雨降りそうだから、私もう行くね!

この俺が、‪”‬雨‪”‬ に劣るなんて。

あー、思い出すだけで不快だ。

女の足元に視線を落とすと、学年別で分けられているスリッパの色が俺と同じ青だった。

同じ学校である事はあの路地裏で会った時、制服を見て気付いていたがまさか学年まで同じだったなんて。

「なに?」

向こうから声を掛けてきた癖に一向に話し出さないから、聞いてやるとおそるおそるといった感じで口を開いた。
< 15 / 39 >

この作品をシェア

pagetop