クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
「でも、あんまりクズっぽくないね!」

右頬に引っ付けた氷嚢と共に、その顔面にキラキラとラメでも散っているかのような、そんな笑顔も貼り付けていた。

「友達にも、宮瀬くんはいい人だって伝えておくね!」

「いいって…、てかやめろ!」

………なんだよこいつ。…なんだよ。

***

「じゃあ、ちょっと消毒するね。染みるけど我慢してね」

あれからすぐに職員会議を終わらせた保健の先生が戻ってきたので結乃の傷を消毒してもらっていた。

幸い頬は、ちょっと冷やしたら赤みも腫れもすぐに引いてくれた。

「あっ、先生、痛いです!」

我慢してねって、言われたばっかなのにはい!はい!と片手を上げて自分の意思を主張する結乃を、保健室の壁にもたれかかりながらボーと眺めていた。

騒がしい奴だな。

こんな痛みに弱い癖に、身体張って男同士の喧嘩なんか止めるんじゃねぇよ…

「で? なんでこんな怪我しちゃったの?」

「宮瀬くんがお友達と喧嘩してたんです!」

「あっ、おい!お前…」

チクリやがった…

「宮瀬くん。校内はもちろん、喧嘩なんてもうしちゃダメよ?」

「分かりました…」

…ったく。余計なこと言いやがって…。

軽い注意だけで済んだから良かったものの…

ここは庇ってくれてもいいとこだろ!!

馬鹿正直にも程がある。
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