クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
ぱっと見だけど、この人私と同じくらいの年齢な気がする。

高校生くらい??

それなのにこの色気?

芸能人に黄色い声援を送る女の子たちの気持ちが分かった気がする。

この世のものとは思えないくらい異次元で。圧倒されちゃうんだ…。

って!

さっきから私変なことばっかり考えすぎ!

「あっ、あの!!もし怪我が酷いようなら救急車を……っ」

落としていた視線をバッ!と上げて尋ねる。

とりあえず保冷剤当てたけど、ちゃんと病院で診てもらった方が​────

あ…れ……??

「いない…」

さっきまでここにいたはずの彼の姿が忽然と無くなっていて辺りをキョロキョロ。

でも見当たらなかった。

***

「あれ? 結乃ちゃん。弁当と一緒に入れておいた保冷剤がないんだけど…」

その晩。

台所で洗い物をするお母さんに弁当袋の中から保冷剤がなくなっていることを指摘されて思わず…

「あー、あれ? 学校で落としちゃった…。ごめん」

そういうことにしておいた。

嘘なんてダメだ、って思うけど……、お母さん心配性だし、ここはこう言っておくのがベストな気がした。

「いいわよ。近所のケーキ屋さんで無料でもらえるやつだから」

言われてみれば保冷剤にはケーキ屋さんの名前がオシャレなロゴで入っていた気がする、と思った直後のこと。
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