クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
ーーズキン!

いてててて…

頭に鋭い痛みが走ってこめかみに手を添えた。

最近たまになるんだよね……偏頭痛。

「…」

あ、治まった!

今みたいにすぐに治まる事が多いから、あんまり気にしてないけどやっぱり季節の変わり目だとよくなるのかな?

もうすぐ本格的に夏が来る。

最近は気温の変動も激しく、この時期の体調不良はよく聞くことだった。

「あ、結乃ちゃん、ちょっとそこのカーテン閉めてくれない?」

「はーい」

外はすっかり夜の街。

レースカーテンの隙間から街灯の灯りが灯っているのが見えて、ふと夕方に会った彼のことが気になった。

あの人、大丈夫だったかな…。

ちゃんとお家に帰れてたらいいけど…

カーテンをシャッと閉めて、なんとなくソファに横になる。

でも…あんな綺麗な人がこの世にいるんだ……。

ーー優しいんだな。お前

「…っ!!」

思い出したらまた心臓がドキドキし始めて。

両手を胸に当てた。

***

それから。

次の日も。

そのまた次の日も。

彼のことが気掛かりで、学校帰りにまた同じ場所を通る度。

私の視線は無意識に右へ行ったり。左へ行ったり。

まるで彼の姿を探しているかのようになんだか騒がしくて、少しだけソワソワした。

でもどれだけ探しても彼と会ったのはあの1回きりだけで。

だんだんあの出来事は夢なんじゃ無いかと思い始めていた1ヶ月後。
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