クズで噂のヤンキー君のことだけは絶対に忘れたくない
彼は私の前に姿を現した。

それはまたあの場所を通った時のこと。

「え……っ」

私の行く手を阻むかのように立っていた彼は私と目が合ったその瞬間。

口元を緩ませニコッと笑った。

懐かしいような。

そんな気持ちになる。

あっけに取られている間にも彼はこちらへ1歩。2歩。と歩み寄ってきた。

あ…。

今日は…、怪我、してない……。

「怪我…、治ったんだ! よかった…」

やっぱり整いすぎているその顔立ちに思わず後退りしてしまいそうになりながら私から声を掛けた。

こんなかっこいいのに、傷跡残っちゃったら大変だもんね。

「あぁ。おかげさまで」

優しく。撫でるような声だった。

前回同様、操られたみたいに胸がドキドキし始めて。

収まれ…っ!私の心臓!

呪文のように何度も心の中で唱えた。

「大丈夫?」

「へっ…?」

「顔。真っ赤だよ?」

「あ!あぁ!これは…っ」

やだ、私ったら…っ

両頬に手の甲を押し付けて温度を確認。

ひゃぁ、ほんとだ…!熱い…っ

パタパタと手を仰いで顔に風を送る。

なんか…、私、おかしいかも…っ

パタパタパタパタパタパタパタパタ!!

一生懸命仰いでいると…
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