君に会うために僕は
放課後。
ルナちゃんと私は真っ先に天文部へと足を運んだ。
優斗先輩との昼食辺りからルナちゃんはずっとおかしい。
いや、優斗先輩が最後にした話を聞いてからだろうか…。
階段で転びかけるし、他の人にはぶつかるし、扉に頭をぶつけるしで心ここにあらずという感じだ。
「ねぇ、ルナちゃん。さっきからどうしたの?大丈夫?」
「だ、大丈夫。ちょっと緊張しちゃって…」
「緊張って何に?」
「…て、天文部に行くのに…」
どういうわけかルナちゃんはずっと天文部へ行くことに緊張して落ち着かない様子だった。顔もずっと強張っている。このまま他の部活動へ先に行ってしまうと大ケガでもしそうだったので、さっさと行ってしまうことにした。
天文部の部室は北校舎の5階にあった。教室は基本南校舎に集まっているので距離が結構離れている。移動時もルナちゃんがケガでもしないかハラハラしていたが、なんとかたどり着くことができた。
「…ルナちゃん、部室ついたけど…大丈夫?」
ルナちゃんはとにかく緊張しているようだった。両手を胸の前でぎゅっと握り震えている。
「だ、大丈夫。一回深呼吸するね」
ルナちゃんは大きく息を吸って深呼吸した。こちらを見て大きくうなずく。”大丈夫”の合図だろう。
ガラッと引き戸を開ける。
「こんにちは。部活動見学に来ました…けど…」
中には誰もいなかった。優斗先輩の姿もない。真っ先に来たため早すぎたのかもしれない。
「なんだぁ…まだ誰もいないのか。緊張して損したぁ」
ルナちゃんが近くにあった椅子にへたり込んだ。その隣に私も座る。
「ルナちゃんってもしかして緊張しいなの?なんか意外だね。初めて会った時の普通に話しかけてくれたし…」
「えっと、どうなんだろう。…そうなのかもしれないけど、今回はちょっと理由があって…」
「理由?」
「その…実は…」
その瞬間ガラガラッと扉の開く音がした。
その音は私たちが入ってきた扉ではなく部室の奥のほうにある別の扉の音だった。中から男子生徒が出てきた。優斗先輩が言っていた昨日入部した生徒だろうか?
「あれ、誰?見学者?」
「あ、そうです!誰もいないと思って勝手にお邪魔してすみません」
私は立ち上がって頭を下げる。
「私、1年E組の二宮紗月と言います。それで、彼女が同じクラスの…」
「あ!まって、昨日の人だ!」
「え?」
「二宮さん、昨日児童館で俺にぶつかってきたでしょ?」
彼が近くに駆け寄ってきた。私より高い見覚えのある背丈。
「あ!昨日の!プラネタリウムで!」
「そうそう!あれ、俺!君さ、『また学校で』とか言ってたけど学年も名前もわかんないのにどう会うつもりだったの?」
昨日はとにかく急いでたので適当なことを言ってしまった。でもまさか会うだなんて思ってもいなかった。なんならもう完全に忘れていたが、そんなことは言えない。
「いや、その、急いでたので流れで言ってしまって…。昨日は本当にすみませんでした…」
「大丈夫!あ、俺、永田晃星って言います。同じ1年でB組。よろしく」
永田さんが手を前に出す。握手…ということだろうか?私は彼の手を握った。
「よろしくお願いします。永田さん」
「晃星でいいよ。二宮さんは…ごめん。下の名前なんだっけ?」
「紗月です。糸偏に少ないと月で紗月と言います」
「!…月が入っているのは、その…いい名前だね」
「え?あ、ありがとうございます」
そんなことを言われたのは初めてだった。でも天体に詳しい人だからきっと月が好きなのだろうなと思った。
「あと、もう一人見学者がいるのですが」
「あれ、ルナ?ルナだよね?え、星和高校だったの?言ってよ!」
「え?知り合いですか…?」
「知り合いも何も同じ中学なんだけど…」
晃星さんがルナちゃんに近寄る。ルナちゃんは何も言わずに下を向いている。晃星さんはしゃがんで彼女の顔を覗き込んだ。
「どうした?ルナ?体調悪い?」
「あ、あ、晃星…あの…」
「ん?」
「し」
「し?」
「失礼しましたぁ!」
そういうとルナちゃんは勢いよく椅子から立ち上がりあたふたしながら部室から飛び出していった。予想外の行動だったためか晃星さんがしりもちをつく。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
晃星さんは何があったのかわからないといった様子でぽかんとしていた。
「いや、痛いけど…ごめん。ルナの様子見てきてもらっていいかな…。なんか嫌われた…ぽい?俺、中学の時なんかしたのかも…わかんないけど」
「わ、わかりました。あの申し訳ないんですけど、優斗先輩に今日は見学できないかもしれないと伝えてもらっていいですかね」
彼は少し困った顔をしながら言った。
「あ、もしかして優斗先輩と知り合い?了解。ルナのことは頼んだ…」
ルナちゃんと私は真っ先に天文部へと足を運んだ。
優斗先輩との昼食辺りからルナちゃんはずっとおかしい。
いや、優斗先輩が最後にした話を聞いてからだろうか…。
階段で転びかけるし、他の人にはぶつかるし、扉に頭をぶつけるしで心ここにあらずという感じだ。
「ねぇ、ルナちゃん。さっきからどうしたの?大丈夫?」
「だ、大丈夫。ちょっと緊張しちゃって…」
「緊張って何に?」
「…て、天文部に行くのに…」
どういうわけかルナちゃんはずっと天文部へ行くことに緊張して落ち着かない様子だった。顔もずっと強張っている。このまま他の部活動へ先に行ってしまうと大ケガでもしそうだったので、さっさと行ってしまうことにした。
天文部の部室は北校舎の5階にあった。教室は基本南校舎に集まっているので距離が結構離れている。移動時もルナちゃんがケガでもしないかハラハラしていたが、なんとかたどり着くことができた。
「…ルナちゃん、部室ついたけど…大丈夫?」
ルナちゃんはとにかく緊張しているようだった。両手を胸の前でぎゅっと握り震えている。
「だ、大丈夫。一回深呼吸するね」
ルナちゃんは大きく息を吸って深呼吸した。こちらを見て大きくうなずく。”大丈夫”の合図だろう。
ガラッと引き戸を開ける。
「こんにちは。部活動見学に来ました…けど…」
中には誰もいなかった。優斗先輩の姿もない。真っ先に来たため早すぎたのかもしれない。
「なんだぁ…まだ誰もいないのか。緊張して損したぁ」
ルナちゃんが近くにあった椅子にへたり込んだ。その隣に私も座る。
「ルナちゃんってもしかして緊張しいなの?なんか意外だね。初めて会った時の普通に話しかけてくれたし…」
「えっと、どうなんだろう。…そうなのかもしれないけど、今回はちょっと理由があって…」
「理由?」
「その…実は…」
その瞬間ガラガラッと扉の開く音がした。
その音は私たちが入ってきた扉ではなく部室の奥のほうにある別の扉の音だった。中から男子生徒が出てきた。優斗先輩が言っていた昨日入部した生徒だろうか?
「あれ、誰?見学者?」
「あ、そうです!誰もいないと思って勝手にお邪魔してすみません」
私は立ち上がって頭を下げる。
「私、1年E組の二宮紗月と言います。それで、彼女が同じクラスの…」
「あ!まって、昨日の人だ!」
「え?」
「二宮さん、昨日児童館で俺にぶつかってきたでしょ?」
彼が近くに駆け寄ってきた。私より高い見覚えのある背丈。
「あ!昨日の!プラネタリウムで!」
「そうそう!あれ、俺!君さ、『また学校で』とか言ってたけど学年も名前もわかんないのにどう会うつもりだったの?」
昨日はとにかく急いでたので適当なことを言ってしまった。でもまさか会うだなんて思ってもいなかった。なんならもう完全に忘れていたが、そんなことは言えない。
「いや、その、急いでたので流れで言ってしまって…。昨日は本当にすみませんでした…」
「大丈夫!あ、俺、永田晃星って言います。同じ1年でB組。よろしく」
永田さんが手を前に出す。握手…ということだろうか?私は彼の手を握った。
「よろしくお願いします。永田さん」
「晃星でいいよ。二宮さんは…ごめん。下の名前なんだっけ?」
「紗月です。糸偏に少ないと月で紗月と言います」
「!…月が入っているのは、その…いい名前だね」
「え?あ、ありがとうございます」
そんなことを言われたのは初めてだった。でも天体に詳しい人だからきっと月が好きなのだろうなと思った。
「あと、もう一人見学者がいるのですが」
「あれ、ルナ?ルナだよね?え、星和高校だったの?言ってよ!」
「え?知り合いですか…?」
「知り合いも何も同じ中学なんだけど…」
晃星さんがルナちゃんに近寄る。ルナちゃんは何も言わずに下を向いている。晃星さんはしゃがんで彼女の顔を覗き込んだ。
「どうした?ルナ?体調悪い?」
「あ、あ、晃星…あの…」
「ん?」
「し」
「し?」
「失礼しましたぁ!」
そういうとルナちゃんは勢いよく椅子から立ち上がりあたふたしながら部室から飛び出していった。予想外の行動だったためか晃星さんがしりもちをつく。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
晃星さんは何があったのかわからないといった様子でぽかんとしていた。
「いや、痛いけど…ごめん。ルナの様子見てきてもらっていいかな…。なんか嫌われた…ぽい?俺、中学の時なんかしたのかも…わかんないけど」
「わ、わかりました。あの申し訳ないんですけど、優斗先輩に今日は見学できないかもしれないと伝えてもらっていいですかね」
彼は少し困った顔をしながら言った。
「あ、もしかして優斗先輩と知り合い?了解。ルナのことは頼んだ…」