君に会うために僕は
第一章
私立星和高等学校。生徒数が1000人を超え、ここら辺ではまあまあ有名な進学校でもある。
進路が確約されているといっても過言ではないぐらい将来には困らない学校だ。有名な大学への進学者も多い。そんな学校なので金持ちのご子息、ご息女も多く在籍しているのだ。そして、その中の一人が…
「入学おめでとう。これ、入学祝い!」
入学祝として高校生が絶対に身に着けないような高級店のネックレスを渡してきたこの男である。
「…あの…困るんですけど。優斗…先輩…。どこにしまっておけというんですか?」
山之内優斗。一つ年上のちょっと金銭感覚がおかしい人。私の、幼馴染…になるのかな。
私がこの高校に入学したのは優斗先輩がいるからだった。
彼は父親の勤め先のお偉いさんの息子さんで、昔から彼と仲良くするように言われてきた。一体彼の父親がどんな立場にいる人なのかは知らないけど、これだけお金を使えるのだからよほどの人なのではないかと思う。優斗先輩や父に聞いてみればわかるのかもしれないけれど、聞いたことはない。教えられたことがあるのかもしれないけど、覚えていない。
「…き…紗月。俺の話、聞いてた?」
優斗先輩が私の名前を呼び、顔を覗き込んだ。…話、全然聞いてなかった。
「あの…名前呼び捨て学校にいる間だけでもやめてもらえませんか。他の人から変に疑われるの嫌なので…。せめて”二宮”って苗字呼びにしていただけると…。あと、考え事してて聞いてませんでした。ごめんなさい」
「…なんで?そんな名前の呼び方気にする人なんていないよ。そんなことよりさ、今日放課後どっか出かけようよ。近くにさ、紗月が好きそうなカフェがあってそこのケーキさー」
この人は、本当に自覚がないというか。入学早々、先輩たちから目つけられたくないんだけど…。
金銭感覚が麻痺してるけど、この人は本当に明るくて優しい人だ。愛想があって、人懐っこくて、本当に柔らかな人。
きっと彼のことを気に入っている人は多くいるのではないかと思う。
…【あの事のせい】で彼女も作ることなく私になんか構わなくちゃいけないなんて気の毒な人。
「…ごめんなさい、優斗先輩」
「え?」
私は先輩から目を逸らした。
「今日は、そのやらなきゃいけないことがあって。それに学校も見て回ったりしたいし…。家まで二時間弱かかっちゃうし…。その、また今度…お願いします」
「…そっか、じゃあまた今度にしようか。」
「はい、じゃあ、えっと、さようなら。また、今度」
先輩に背を向け、私はその場を後にした。
優斗先輩が手を振ってくれていた気がしたけど、私は振り返さなかった。
私にはやらなきゃいけないことがある。
”優斗先輩がいる”というのは親を説得させるための表向きの理由。
そう、私は…。
過去の自分を取り戻すためにこの生まれ故郷にあるこの学校に来た。
進路が確約されているといっても過言ではないぐらい将来には困らない学校だ。有名な大学への進学者も多い。そんな学校なので金持ちのご子息、ご息女も多く在籍しているのだ。そして、その中の一人が…
「入学おめでとう。これ、入学祝い!」
入学祝として高校生が絶対に身に着けないような高級店のネックレスを渡してきたこの男である。
「…あの…困るんですけど。優斗…先輩…。どこにしまっておけというんですか?」
山之内優斗。一つ年上のちょっと金銭感覚がおかしい人。私の、幼馴染…になるのかな。
私がこの高校に入学したのは優斗先輩がいるからだった。
彼は父親の勤め先のお偉いさんの息子さんで、昔から彼と仲良くするように言われてきた。一体彼の父親がどんな立場にいる人なのかは知らないけど、これだけお金を使えるのだからよほどの人なのではないかと思う。優斗先輩や父に聞いてみればわかるのかもしれないけれど、聞いたことはない。教えられたことがあるのかもしれないけど、覚えていない。
「…き…紗月。俺の話、聞いてた?」
優斗先輩が私の名前を呼び、顔を覗き込んだ。…話、全然聞いてなかった。
「あの…名前呼び捨て学校にいる間だけでもやめてもらえませんか。他の人から変に疑われるの嫌なので…。せめて”二宮”って苗字呼びにしていただけると…。あと、考え事してて聞いてませんでした。ごめんなさい」
「…なんで?そんな名前の呼び方気にする人なんていないよ。そんなことよりさ、今日放課後どっか出かけようよ。近くにさ、紗月が好きそうなカフェがあってそこのケーキさー」
この人は、本当に自覚がないというか。入学早々、先輩たちから目つけられたくないんだけど…。
金銭感覚が麻痺してるけど、この人は本当に明るくて優しい人だ。愛想があって、人懐っこくて、本当に柔らかな人。
きっと彼のことを気に入っている人は多くいるのではないかと思う。
…【あの事のせい】で彼女も作ることなく私になんか構わなくちゃいけないなんて気の毒な人。
「…ごめんなさい、優斗先輩」
「え?」
私は先輩から目を逸らした。
「今日は、そのやらなきゃいけないことがあって。それに学校も見て回ったりしたいし…。家まで二時間弱かかっちゃうし…。その、また今度…お願いします」
「…そっか、じゃあまた今度にしようか。」
「はい、じゃあ、えっと、さようなら。また、今度」
先輩に背を向け、私はその場を後にした。
優斗先輩が手を振ってくれていた気がしたけど、私は振り返さなかった。
私にはやらなきゃいけないことがある。
”優斗先輩がいる”というのは親を説得させるための表向きの理由。
そう、私は…。
過去の自分を取り戻すためにこの生まれ故郷にあるこの学校に来た。