君に会うために僕は
『春の夜空を見上げたことはありますか?』
プラネタリウムが始まった。
私の視界には満点の星空が広がる。
『今見えているのは日本が春を迎えているときに見ることができる星空です』
すると星々が線と線で結ばれ、大きな熊と小さな熊が現れた。
『これはおおくま座。実は88ある星座の中で三番目に大きさです。おおくま座の背中から尻尾は、有名な北斗七星でできています。その斜め下には小さな熊がいますね。これがこぐま座。実はこの二匹の熊には悲しいお話があるのです。皆様にご紹介していきましょう』
だんだんと夜空が消えていき、星空の代わりにおおくま座とこぐま座のアニメーションが映し出された。あくまで子ども向けのプラネタリウムだ。子どももただ星を見ているよりストーリー性のあるこちらのほうが良いだろう。
数か月前にたまたま1人3000円のプラネタリウムを見る機会があった。
とても美しかった。視界すべてが星空で、まるで宇宙の中にいるようだった。
それを見た後にこれを見た大人がいれば『これをプラネタリウムと言っていいのか?』という人がいるかもしれない。まぁ、値段も違うわけだけれど…。
でも、私は違った。むしろ私は逆だった。
見た瞬間鳥肌が立った。
そうこれが…
私にとってこれこそが”プラネタリウム”だと感じた。
小さいドームのため視界すべてを星空で埋めることはできない。
星空がメインではなく、あくまで物語重視で。
星一つ一つの輝きもクオリティもすべてがあれには足りていない。
なのに…。
身体がぞわっとして、心臓がバクバクした。
鼻の奥がツンとして、なんだか涙も出そうだった。
胸がいっぱいになって、なんてきれいなんだろうと思った。
ふと、誰かの存在を思い出した。
あ、私誰かとここに来たことがあるんだ。
その人は隣にいつも座っていて。
ひじ掛けが隣の人と共有の椅子だから、油断してると手や腕が当たってしまう。
当たった時、心臓が飛び跳ねた。
心臓の鼓動が早くなって、顔が熱くなって。
せっかく大好きなプラネタリウムに来ているのに全然集中できなかった…。
甘酸っぱい気持ちが蘇ってきて、心臓の鼓動がずっと早い。
あぁ、私、好きな人とここに来たことがあるんだ。
気づくと、プラネタリウムは終盤に差し掛かっていた。
星座となった熊の親子は、キラキラと美しく光る星々へ戻っていく。
『もうすぐ夜が明けるようです』
夜空がだんだん紅くなり消えていく。
綺麗な朝焼けがドームを朱色に染め上げた。
どうやらプラネタリウムはここで終わりのようだ。
ドームが朱色から明るい水色に変わり全体の照明が付いた。
「以上で本日最終回のプラネタリウムは終わりです。お忘れ物にお気を付けください」
職員さんのアナウンスがあり、ギィーと出入り口のドアを開ける音がした。
「お兄ちゃん、間に合ってよかったねー!」
前のほうの席から声がした。どうやら児童館の入り口で出会った兄妹もプラネタリウムを見ていたようだ。
「危なかったけどな…。ほら、早く帰らないとママにまた怒られるから帰るぞ」
「そうだね!今日はご飯唐揚げって言ってたよ!」
楽しそうな会話をして駆けていった。
…私も早く帰らないと。結構ぎりぎりの時間になってしまった。
急いで荷物をまとめ、出口へ急ぐ。
ここから駅は、バスのほうが早いだろうか…。
スマホを見ながら出ていこうとすると誰かにぶつかってしまった。
「わ!ご、ごめんなさい。スマホを見ていたばっかりに…」
「いや、こちらこそ…え?」
「え…?」
ぶつかった相手は私より身長の高い男の人だった。
子どもではなかったのは不幸中の幸いだ。
ただ驚いたことに彼の制服は見覚えがあるものだった。
「その制服…星和高校、ですよね」
「そうです…。同じ学校ですね」
「…あの…」
キーンコーンカーンコーン
彼が何か言いかけたタイミングで児童館のチャイムが鳴った。
我に返り、スマホを確認する。
スマホに表示された時刻を見て私はぎょっとした。
乗る予定だったバスにこのままだと乗り遅れてしまう。
「あ!ごめんなさい!ちょっと急いでて…その、また学校で!」
「え?」
このバスを逃すと、門限までに帰れない可能性が出てくる。
私は急いでバス停へ向かった。
「…学校でって、学年も名前も知らないんだけど…」
プラネタリウムが始まった。
私の視界には満点の星空が広がる。
『今見えているのは日本が春を迎えているときに見ることができる星空です』
すると星々が線と線で結ばれ、大きな熊と小さな熊が現れた。
『これはおおくま座。実は88ある星座の中で三番目に大きさです。おおくま座の背中から尻尾は、有名な北斗七星でできています。その斜め下には小さな熊がいますね。これがこぐま座。実はこの二匹の熊には悲しいお話があるのです。皆様にご紹介していきましょう』
だんだんと夜空が消えていき、星空の代わりにおおくま座とこぐま座のアニメーションが映し出された。あくまで子ども向けのプラネタリウムだ。子どももただ星を見ているよりストーリー性のあるこちらのほうが良いだろう。
数か月前にたまたま1人3000円のプラネタリウムを見る機会があった。
とても美しかった。視界すべてが星空で、まるで宇宙の中にいるようだった。
それを見た後にこれを見た大人がいれば『これをプラネタリウムと言っていいのか?』という人がいるかもしれない。まぁ、値段も違うわけだけれど…。
でも、私は違った。むしろ私は逆だった。
見た瞬間鳥肌が立った。
そうこれが…
私にとってこれこそが”プラネタリウム”だと感じた。
小さいドームのため視界すべてを星空で埋めることはできない。
星空がメインではなく、あくまで物語重視で。
星一つ一つの輝きもクオリティもすべてがあれには足りていない。
なのに…。
身体がぞわっとして、心臓がバクバクした。
鼻の奥がツンとして、なんだか涙も出そうだった。
胸がいっぱいになって、なんてきれいなんだろうと思った。
ふと、誰かの存在を思い出した。
あ、私誰かとここに来たことがあるんだ。
その人は隣にいつも座っていて。
ひじ掛けが隣の人と共有の椅子だから、油断してると手や腕が当たってしまう。
当たった時、心臓が飛び跳ねた。
心臓の鼓動が早くなって、顔が熱くなって。
せっかく大好きなプラネタリウムに来ているのに全然集中できなかった…。
甘酸っぱい気持ちが蘇ってきて、心臓の鼓動がずっと早い。
あぁ、私、好きな人とここに来たことがあるんだ。
気づくと、プラネタリウムは終盤に差し掛かっていた。
星座となった熊の親子は、キラキラと美しく光る星々へ戻っていく。
『もうすぐ夜が明けるようです』
夜空がだんだん紅くなり消えていく。
綺麗な朝焼けがドームを朱色に染め上げた。
どうやらプラネタリウムはここで終わりのようだ。
ドームが朱色から明るい水色に変わり全体の照明が付いた。
「以上で本日最終回のプラネタリウムは終わりです。お忘れ物にお気を付けください」
職員さんのアナウンスがあり、ギィーと出入り口のドアを開ける音がした。
「お兄ちゃん、間に合ってよかったねー!」
前のほうの席から声がした。どうやら児童館の入り口で出会った兄妹もプラネタリウムを見ていたようだ。
「危なかったけどな…。ほら、早く帰らないとママにまた怒られるから帰るぞ」
「そうだね!今日はご飯唐揚げって言ってたよ!」
楽しそうな会話をして駆けていった。
…私も早く帰らないと。結構ぎりぎりの時間になってしまった。
急いで荷物をまとめ、出口へ急ぐ。
ここから駅は、バスのほうが早いだろうか…。
スマホを見ながら出ていこうとすると誰かにぶつかってしまった。
「わ!ご、ごめんなさい。スマホを見ていたばっかりに…」
「いや、こちらこそ…え?」
「え…?」
ぶつかった相手は私より身長の高い男の人だった。
子どもではなかったのは不幸中の幸いだ。
ただ驚いたことに彼の制服は見覚えがあるものだった。
「その制服…星和高校、ですよね」
「そうです…。同じ学校ですね」
「…あの…」
キーンコーンカーンコーン
彼が何か言いかけたタイミングで児童館のチャイムが鳴った。
我に返り、スマホを確認する。
スマホに表示された時刻を見て私はぎょっとした。
乗る予定だったバスにこのままだと乗り遅れてしまう。
「あ!ごめんなさい!ちょっと急いでて…その、また学校で!」
「え?」
このバスを逃すと、門限までに帰れない可能性が出てくる。
私は急いでバス停へ向かった。
「…学校でって、学年も名前も知らないんだけど…」