彼女が恋をしたのは。
天使
12月24日、
あいにくの雨。
ぽつぽつ、
ぽつぽつと、
プルルル。
ガチャ。
「もしもし。」
「あっ。もしもし。」
と愛ちゃんが、びっくりして言うと。
「ごめん、仕事残業になっちゃったんだよ。」
「だから、先レストラン行ってて。ごめんね。」
と、謝った。
「あっ。はい。先行って待ってますね。
お仕事頑張って下さい。」
「それじゃあ。」
「じゃあ、また。」
と俺が申し訳、無さそうに言うと、
受話器を切った。
19:00
まだまだは終わらなさそうだ。駿しゅんより。
20:00
全然終わらない。終わるのかな、
今日。駿しゅんより。
21:29
あ~あ。ラストオーダー終わっちゃうよ。
駿しゅんより。
「本当にごめん!」
て帰っちゃったかな〜
お店は暗かった。もう帰っちゃったかあ〜。
と、ダメ元で暗がりのお店に近づくと、
ひときは赤いコートで真赤な手袋をした女性が、
立っていた。
あっ、愛ちゃん。
「ごめんね。遅くなって。本当にごめんね。」
「おそいいっ、、、。」
と言って愛ちゃんは、ポロポロ泣いてしまった。
「ごめん。」
と言って俺は、真っ正面から強く抱きしめた。
しくしく泣いている。
ふと見上げた目に涙を溜めている姿を見て、
俺は、好きになってしまったのだ。
「えっ。」
と愛ちゃんが言うと。
「俺っっ、もう傷つけたくないんだよ。」
と涙をこらえた。
俺からのプレゼントは、赤い天使のネックレス。
お揃いで。俺も青じゃなくて、赤。
真赤な天使のネックレス、
「付けようか?」
「うん。」
と愛ちゃんが瞬きをすると、
真赤な天使のネックレスは地面にするりと、
落ちていった。
愛ちゃんが、それを取ろうとしゃがもうとした
瞬間。
キスをした。
見つめ合って。もう一度キスをした。
「あっ。」
と愛ちゃんが言うと、粉雪がひらひら、
舞い降りてくる。
地面に落ちた真赤な天使のネックレスが、
私達を祝福するかの様に、微笑んだ。