彼女が恋をしたのは。

デート


というわけで、

俺と葵ちゃんとお付き合いが、始まった。

今日は、初デート。

映画館デートだ。

待ち合わせ9:45ギリギリ。

10:00の「彼女に恋をしたのは。」を

見るんだったよな。

と、先に葵ちゃんは着いていた。

「おはようございます。」

「あっ、おはよう。ごめん待った?ごめんね〜」

「いいですよ。」

「ごめん、何分前に着いたの?」

「10分前位です。

ぜーんぜん、待ってないですよ。」

「駿しゅんさんのこと考えてたら。

すぐ時間、きちゃって。」

と何やら小さな保冷剤付きの袋から、

すっと右手で、何かを取り出すと、、、。

「はい。これ愛妻弁当。一緒に食べましょ。」

と、嬉しそうに微笑んだ。

かっ、可愛い。

「おっ。俺は手土産とか何にも持ってきて

ないから、気が利かなくて、ごめん。」

「良いんですよ。手土産無くても。

後で、買って貰いますから、お土産。

お揃いの。」

そうこうしているうち、

10:00の「彼女に恋をしたのは。」が始まる。

コーラ2つとポップコーン、


俺は塩が、


好きなんだよな〜。

映画開始10分。感動のシーンでジ〜ンときた。

「感動するね・・・。」








と横に座る葵ちゃん。泣いてるの????



「私。ごめんなさい。泣いたりなんかして。」



思わず、抱きしめてしまった。

優しくギュッと強く、そして優しく、、。

「あっ。ごめん。急に抱きついて。大丈夫?」

「ううっ。大丈夫です。嬉しくて、、。」

「抱きしめてくれたこと。」

「私、ぜーったい。駿しゅんさんの

可愛くて、素敵なお嫁さんに、なってやるって。

そう、今決めたんです。たった今。ここで。」

びっくりしたが、嬉しかった。そして

寂しかった、、。せつなかった。

と、また、あの自殺未遂の女の子を思い出した。

絶対、思い出してはならないタイミングで思い出

してしまった。

俺としたことが〜。

いつものことだが、俺はタイミングが

悪いわけじゃないのだが、ミョーにタイミングの

悪いときに、ミョーにタイミングの悪い事を

思い出してしまう癖があるのだ。悪い癖だ。

とぼーっとしていると、

「あの。ぼーっとしてますが大丈夫ですか?」

と、ささっと自分の持っていた白い小さな

かばんから、薄い青のハンカチを取って、

涙を拭った。葵ちゃんは青が好きなことを

それで悟ったのだ。

またそれで、ぼーっとしてしまった。

「青が好きなのかなぁ。」



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