彼女が恋をしたのは。

婚姻届け

朝一番のりで、まだ区役所が空いてない。

「駿しゅんさんと、婚約できると思うと、

嬉しくて、何時間でも待てそう♡」

「おっ。そうだな。ずっといつまでも一緒に。

居てくれるよな。」

「うん。」

と葵は、

「あっ、職員の人が鍵開けに来てくれたよ〜。」

と言うから。何を思ったのか俺はつかさず、

「これ、婚姻届け。お願い致します。」

と、玄関先で深々と、お辞儀をした。

「あの~すみません。窓口で手続きしますね〜」

と、暗そうだけど、明るい声の女性の職員が

席に案内してくれた。

15分後、

「これで婚約成立です。おめでとうございます。」

と職員が言うと、

「俺、一生葵を、大切にするよ。」

と割と大きい声で、フロア中が聞こえるように、

言ってしまった。

「あはは。」

と葵は笑った。そばにいると、

落ち着くんだよなぁ。

なんだか。

区役所の前で、2人で婚約届けを持って、

写真を撮る。

そういえば、初めて写真を撮る。葵と。

「帰り。スーパーよってこ。」

「何食べたい?」

「うん。鍋、お鍋食べたい。」

と俺が言うと、

「えっ。何か今日暑いけど、鍋が良いの?」

と、くすくす笑っていた。俺のそばで。

帰り道、














あの橋で、








 





「死んでやる!」







とざわざわした。人混みが。

「何だろうね〜。」

と葵が言うから、見上げて見てみると、

橋の上に例の女の子が、立ってる。

叫んでる。わめいてる。泣いている。


警察の人が、

「確保!!」

と言って取り押さえると、

俺の横を突っ切て走り去ろうとした時に、

思わず、腕を掴み引き留めてしまった。

「君!大丈夫じゃないよ!」

とせって俺が言うと。

「ほっといてよ!!何も知らないくせに!!」

と振り切って走って俺の前から

去っていこうとした時に、

「次!何処かで会ったら、結婚しよ!」

「俺、お前の事離さないから。」

彼女のいる前で、大声で言ってしまった。

彼女がいるというのに、俺としたことが。

と橋の女の子は去っていった。

皆を振り払いながら。

「きっと、結婚しよ、、」

とぼそっと、女の子が遠くなるのをぼんやり

見つめながら、

と、ふと葵を見ると、

泣き崩れてしまったのであった。

「あっ、葵っ。これは違うんだよ。

勘違いなんだよ。」

と俺が、あたふたしていたら、

「酷ひどいね、駿しゅん君。私、今日

妻になったばかりでしょ。正式な。妻でしょ。。」

とポロポロと泣いていた。

俺は、それを一瞬心配するも、橋の女の子の

心配がよぎってしまった。
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