雨上がりは君の隣にいたい

雨の噂

六月に入って、梅雨になった。
そして、自然と雨の日が多くなってから、ある噂が生徒の間で、話題になっていた。
水月(みづき)
「どうしたの?」
放課後になって、すぐ、同じクラスの柚葉が話しかけてきた。
「雨の日の放課後、出るんだって」
「何が?」
「幽霊」
「えぇっ、それ、本当なの?」
「まだ、分からないけど、出るんだって」
雨の日の放課後、誰も居ない教室で幽霊が出る。
その噂が流れ始めた頃、それを確かめる人が増えたらしい。
だけど、誰も居ない教室には、やはり、誰も居ない。だから、すぐ、確かめようとする人は、居なくなった。
私は、そんな噂がある事さえ、知らなかった。
「あっ、私、先生のところ、行かないと」
「そうだったね。引き留めちゃった」
「大丈夫だよ」
「ありがとう。また、明日」
「うん。またね」
私は、学級委員の仕事で、普段、閉まっている、生徒会室で、資料の整理をしていた。
「こんな感じかな」
そういえば、今日は、雨だな。
柚葉が言っていた幽霊が居るかもしれない日。
まあ、幽霊なんて、信じてないけど。
そんな事を思いながら、生徒会室を出て、鍵を閉めて、鍵を返しに職員室へ向かう。今日は、部活も委員会も無いから、放課後は、静かだ。
雨の音が聞こえて来て、外を見ると、反対側の校舎の教室に一瞬だけ、人影が見えた。
あの教室は、うちのクラスだ。
私は、気づいたら、走っていた。
今の時間、先生達は、会議で、全員、職員室だ。
だから、こんな時間に教室に居るのは、先生以外の誰かしか居ない。
もしかして、幽霊とか。いや、それは、無いだろう。
「着いた」
私は、一度、深呼吸をする。
そして、勢いよく、扉を開けた。
「誰か、居るの?」
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