大嫌い同士の大恋愛
――あれ、コレ、マズい……?
視線を合わせた片桐さんの瞳の奥に、昏い感情が見えた気がして、心臓が冷える。
「か、片桐さん」
「――何?……ちゃんと、男を部屋に入れるって意味、自覚してもらわないと」
「あ、あのっ……」
「僕、我慢するって言ったのにね。――煽ってきたら、抵抗できないでしょ」
「た、敬さんっ!」
半泣きで彼の名を呼んでみるが、キスで塞がれる。
再び熱い舌に翻弄され、涙が浮かんできた。
「――ダメだって。……今、キミがしてるコト、全部逆効果だから」
「え、やっ……」
一つ一つ、ブラウスのボタンが外され、下着があらわになる。
「その声も、名前呼びも、表情も――男には、興奮材料にしかならないよ」
「――っ……ひゃあっ!」
そう言うと、胸元に数回吸い付かれ、可愛げのない声が上がってしまう。
なのに、満足そうに、片桐さんは笑うのだ。
「可愛い」
「か……」
そして、彼は、私の視界から外れる。
「――ゴメン、これ以上は、ちゃんと合意の上で、ね」
そう言って、私の手を引き、立ち上がらせようとするが、そのまま彼に向かって倒れ込んでしまった。
「羽津紀さん?」
「……バッ……バカッ!……身体……力、入らないですっ……!」
悪態をつく私を、片桐さんは、笑って抱え上げる。
「……っ……きゃあ!」
「――ベッドまで連れて行こうか?」
「……結構です!」
彼は、そのままリビングに入ると、私を座らせる。
「大丈夫?」
「……わかりません。……こんな風になった事無いので」
ふてくされ気味に、視線を逸らして言うと、クッ、と、喉奥で笑われた。
「……何でしょうか」
「ゴメン、ゴメン。……そっか、初めてかぁ……」
うれしそうに言う彼を、思わず横目でにらみつける。
「……三ノ宮くんとは、こんな風にはしなかったのかな?」
片桐さんは、茶化すようにそう言うが――目は、笑っていなかった。
「……こ、江陽とは、そんな……」
――いや、なったか。
この前、お見合いの時に無理矢理襲われた事を思い出し――思わず眉を寄せた。
――あの時は、突然すぎて……しかも、ヤツの股間に蹴りを入れたという、とんでもな方法で逃れたものだから、気持ち良いとか、頭の外だった。
「――羽津紀さん」
「え」
「僕、このチャンスは逃さないから」
「――か……片桐さん……?」
「キミに、付け入る隙ができたら――ちゃんと、合意の元、囲い込むからね」
「……え……」
彼は、そう言って私の額に軽くキスをすると、立ち上がる。
「新居、ちゃんと考えておいてね。リミットは、あまり無いからさ」
私は、呆然としながら、彼が出て行くのを見送ると、熱くなっていた身体を冷ますように、抱き締める。
――……どうしよう……。
――本当に……なし崩し的に、結婚までこじつけられるかもしれない……。
片桐さんの唇と手が気持ち良いという事を、身体に刷り込まれるようで――私は、思い切り、かぶりを振って、煩悩を叩き出そうとする。
けれど、頭と身体が繋がってくれない。
――……初めての感覚を、身体が受け入れてしまっているようで――何だか、怖くなってしまった。
視線を合わせた片桐さんの瞳の奥に、昏い感情が見えた気がして、心臓が冷える。
「か、片桐さん」
「――何?……ちゃんと、男を部屋に入れるって意味、自覚してもらわないと」
「あ、あのっ……」
「僕、我慢するって言ったのにね。――煽ってきたら、抵抗できないでしょ」
「た、敬さんっ!」
半泣きで彼の名を呼んでみるが、キスで塞がれる。
再び熱い舌に翻弄され、涙が浮かんできた。
「――ダメだって。……今、キミがしてるコト、全部逆効果だから」
「え、やっ……」
一つ一つ、ブラウスのボタンが外され、下着があらわになる。
「その声も、名前呼びも、表情も――男には、興奮材料にしかならないよ」
「――っ……ひゃあっ!」
そう言うと、胸元に数回吸い付かれ、可愛げのない声が上がってしまう。
なのに、満足そうに、片桐さんは笑うのだ。
「可愛い」
「か……」
そして、彼は、私の視界から外れる。
「――ゴメン、これ以上は、ちゃんと合意の上で、ね」
そう言って、私の手を引き、立ち上がらせようとするが、そのまま彼に向かって倒れ込んでしまった。
「羽津紀さん?」
「……バッ……バカッ!……身体……力、入らないですっ……!」
悪態をつく私を、片桐さんは、笑って抱え上げる。
「……っ……きゃあ!」
「――ベッドまで連れて行こうか?」
「……結構です!」
彼は、そのままリビングに入ると、私を座らせる。
「大丈夫?」
「……わかりません。……こんな風になった事無いので」
ふてくされ気味に、視線を逸らして言うと、クッ、と、喉奥で笑われた。
「……何でしょうか」
「ゴメン、ゴメン。……そっか、初めてかぁ……」
うれしそうに言う彼を、思わず横目でにらみつける。
「……三ノ宮くんとは、こんな風にはしなかったのかな?」
片桐さんは、茶化すようにそう言うが――目は、笑っていなかった。
「……こ、江陽とは、そんな……」
――いや、なったか。
この前、お見合いの時に無理矢理襲われた事を思い出し――思わず眉を寄せた。
――あの時は、突然すぎて……しかも、ヤツの股間に蹴りを入れたという、とんでもな方法で逃れたものだから、気持ち良いとか、頭の外だった。
「――羽津紀さん」
「え」
「僕、このチャンスは逃さないから」
「――か……片桐さん……?」
「キミに、付け入る隙ができたら――ちゃんと、合意の元、囲い込むからね」
「……え……」
彼は、そう言って私の額に軽くキスをすると、立ち上がる。
「新居、ちゃんと考えておいてね。リミットは、あまり無いからさ」
私は、呆然としながら、彼が出て行くのを見送ると、熱くなっていた身体を冷ますように、抱き締める。
――……どうしよう……。
――本当に……なし崩し的に、結婚までこじつけられるかもしれない……。
片桐さんの唇と手が気持ち良いという事を、身体に刷り込まれるようで――私は、思い切り、かぶりを振って、煩悩を叩き出そうとする。
けれど、頭と身体が繋がってくれない。
――……初めての感覚を、身体が受け入れてしまっているようで――何だか、怖くなってしまった。