大嫌い同士の大恋愛
24.緊張感のあるお茶会
ポン、と、エレベーターの到着音が響き、再び扉がゆっくりと開く。
そして、企画課に入ると、部屋の中を見回すが、お昼休みで出払ったようで、誰も残っていなかった。
たぶん、もう一基のエレベーターに乗っていったのだろう。
聖に、たきつけられるようにして戻っては来たものの、当の江陽がいなければ、話そうにも話せない。
そう思い、ため息をつくと、踵を返す。
すると、不意に、サンプル室のドアが開いた。
「――羽津紀?」
「……こ、江陽」
どうやら、何かを探していたようで、手には、先ほど私が返した企画書があった。
「――お昼は」
「……アンタこそ」
「デスクで軽く食った。ダメ出し喰らったヤツ、やり直すのに時間かかりそうだったからよ。――午後から会議だし」
「……そう」
私は、視線を逸らしたまま、口を閉じる。
――この状況で、一体、何を伝えれば良いんだろう。
聖には、本気で向き合えと言われたが――私は、私なりに、ちゃんと本気だったつもりなのだ。
「――昼メシ、まだなのかよ」
「え」
すると、江陽の視線が手元に向けられ、うなづいて返す。
「……ちょっと、タイミングが……」
聖とのやり取りを伝える訳にもいかず、ごまかそうとすると、ヤツは、あからさまに眉をしかめた。
「ンだよ。まだ、何か言われてんのかよ」
「は⁉違うわよ!」
「けど」
「放っておいてよ、大丈夫だから!」
「――ああ、そうかよ!」
売り言葉に買い言葉。
いつものように――でも。
「……何で、そんな事言うのよ……」
そう返せば、ヤツは、う、と、口ごもる。
「……お前……結構、いろいろ言われてるみてぇだろ。……こっち来た時から、耳に入ってくるんだよ」
ボヤくように言われ、目を丸くする。
「……まさか……心配、してるの……?」
「……悪ぃかよ」
――そんなもの、江陽が気にするものではないのに。
元々、課長補佐に上げられた時点で、陰口など、フルコースで言われているのだ。
それを黙らせる仕事ができなければ、言われても仕方がないと思い、放置しているだけなんだから。
「――……まあ、別に、関係無ぇけどな」
「そうね。――アンタは、私なんて、大嫌いなんでしょうし」
「――……ああ、大嫌いだよ」
「私も、アンタなんて、大嫌いよ」
――まるで、挨拶代わりだ。
そんな事を思えば、不意に腕を取られ――抱き締められた。
「ちょっ……江陽⁉」
「――うるせぇ!……やっぱり、どうやったって、大嫌いになんてなれねぇよ!」
「――……え」
私は顔を上げようとするが、ヤツが力づくで自分の胸に押さえつけると、その速すぎる鼓動が耳に届き、固まってしまう。
「――……大嫌いになんて、一生、なれる訳無ぇだろ……」
そう言って、すがるように私の肩に顔をうずめた。
「――……なあ……もう、オレに、望みは無ぇの……?」
「……こ、う……よ……」
何、それ。
――私は――アンタなんて、最初から――……。
けれど、喉に何かが引っかかったように、言葉が出ない。
――ちゃんと、本気で向き合わなきゃ――江陽は、私に振り回されるまま。
それは、わかってる。
でも――。
「――羽津紀さん、どうかしたの?」
不意に割って入った声に、ビクリ、と、肩を震わせる。
振り返れば、お昼を終えたのか――片桐さんが、エレベーターから降りたところだった。
そして、企画課に入ると、部屋の中を見回すが、お昼休みで出払ったようで、誰も残っていなかった。
たぶん、もう一基のエレベーターに乗っていったのだろう。
聖に、たきつけられるようにして戻っては来たものの、当の江陽がいなければ、話そうにも話せない。
そう思い、ため息をつくと、踵を返す。
すると、不意に、サンプル室のドアが開いた。
「――羽津紀?」
「……こ、江陽」
どうやら、何かを探していたようで、手には、先ほど私が返した企画書があった。
「――お昼は」
「……アンタこそ」
「デスクで軽く食った。ダメ出し喰らったヤツ、やり直すのに時間かかりそうだったからよ。――午後から会議だし」
「……そう」
私は、視線を逸らしたまま、口を閉じる。
――この状況で、一体、何を伝えれば良いんだろう。
聖には、本気で向き合えと言われたが――私は、私なりに、ちゃんと本気だったつもりなのだ。
「――昼メシ、まだなのかよ」
「え」
すると、江陽の視線が手元に向けられ、うなづいて返す。
「……ちょっと、タイミングが……」
聖とのやり取りを伝える訳にもいかず、ごまかそうとすると、ヤツは、あからさまに眉をしかめた。
「ンだよ。まだ、何か言われてんのかよ」
「は⁉違うわよ!」
「けど」
「放っておいてよ、大丈夫だから!」
「――ああ、そうかよ!」
売り言葉に買い言葉。
いつものように――でも。
「……何で、そんな事言うのよ……」
そう返せば、ヤツは、う、と、口ごもる。
「……お前……結構、いろいろ言われてるみてぇだろ。……こっち来た時から、耳に入ってくるんだよ」
ボヤくように言われ、目を丸くする。
「……まさか……心配、してるの……?」
「……悪ぃかよ」
――そんなもの、江陽が気にするものではないのに。
元々、課長補佐に上げられた時点で、陰口など、フルコースで言われているのだ。
それを黙らせる仕事ができなければ、言われても仕方がないと思い、放置しているだけなんだから。
「――……まあ、別に、関係無ぇけどな」
「そうね。――アンタは、私なんて、大嫌いなんでしょうし」
「――……ああ、大嫌いだよ」
「私も、アンタなんて、大嫌いよ」
――まるで、挨拶代わりだ。
そんな事を思えば、不意に腕を取られ――抱き締められた。
「ちょっ……江陽⁉」
「――うるせぇ!……やっぱり、どうやったって、大嫌いになんてなれねぇよ!」
「――……え」
私は顔を上げようとするが、ヤツが力づくで自分の胸に押さえつけると、その速すぎる鼓動が耳に届き、固まってしまう。
「――……大嫌いになんて、一生、なれる訳無ぇだろ……」
そう言って、すがるように私の肩に顔をうずめた。
「――……なあ……もう、オレに、望みは無ぇの……?」
「……こ、う……よ……」
何、それ。
――私は――アンタなんて、最初から――……。
けれど、喉に何かが引っかかったように、言葉が出ない。
――ちゃんと、本気で向き合わなきゃ――江陽は、私に振り回されるまま。
それは、わかってる。
でも――。
「――羽津紀さん、どうかしたの?」
不意に割って入った声に、ビクリ、と、肩を震わせる。
振り返れば、お昼を終えたのか――片桐さんが、エレベーターから降りたところだった。