大嫌い同士の大恋愛
就職して二年目、お盆に帰省して、この前会った楠川さんと一緒に、いつもの居酒屋に行った時の事――
時期柄、店内は混み合っていて、店員に相席を打診されたそうだ。
「……お互い二人連れで――親和は、人当たり良いから……割と、和やかだったんだけど――」
その時、隣にいたのが――立岩さんだったようだ。
「今と全然違う派手なカッコで、結構面倒くさく絡んできてさ……。オレは、逃げたかったんだけど、店でゴタゴタしたくなくてよ……まあ、営業だと思って相手してたんだよ。……そしたら――」
――え、待って、キミ、見たコトあるかも。
――そうですか。
――……入社式の時、見たかも。
――え?
ギョッとして彼女を見やれば、口元を上げて返された。
その、横にあったホクロを――今、思い出した。
「……その時、マズいと思ったんだけど――一緒にいた、あの女の連れが、親和と割と気が合ったみてぇで……」
結局、当たり障りのないレベルで相手をしていたが――もしかしたら、良いように取られるようなコトを言ったのかもしれない。
「――でもよ、マトモに会ったのは、その時だけで――オレは、大阪だったし……」
「アンタ、自分の名前は言ったの」
「いや。……ただ、親和に呼ばれてたから……覚えてたのかも」
江陽は、そう言って、大きく息を吐いた。
「……悪い……。――ただ、今の今まで、記憶に引っかかりもしなかったレベルだった」
「――……それは、もう、彼女のとらえ方としか言えないわ」
おそらく、その後、人事部という自分の立場で、調べ上げたのだろう。
江陽という男を――手に入れるために。
「……でも、思い出したって言えば、きっと、良いように取られるわよ」
「――ああ」
私は、座り込んだ江陽の隣に、腰を下ろした。
「……アンタ、昔みたいに、手当たり次第に突っかかっていたら、こんな事にはならなかったのかもしれないのにね……」
「――成長したんだよ」
「そこは、逆効果だったみたいだけど」
江陽の見目で、人当たりが良くなったら――それは、勘違いされても、仕方ない部分はあったのかもしれない。
「――……まあ……原因がわかって、良かったじゃないの」
「……良いのかよ、それ」
「少なくとも、同じ轍は踏まないでしょう。――それとも、アンタ、そこまでバカ?」
「……おい」
江陽は、顔を上げ、私をのぞき込む。
「……相変わらず、容赦無ぇのな」
「アンタ相手に、容赦する訳無いでしょう」
すると、ヤツは、苦笑い気味に口元を上げる。
――私を、優しく見つめたまま。
瞬間、不本意に心臓が跳ね上がってしまうが、ギュッと、手を握り締めて耐えた。
「――羽津紀」
「……何」
江陽は、その手を、そっと包む込む。
そして、少しだけ力を入れると、私に言った。
時期柄、店内は混み合っていて、店員に相席を打診されたそうだ。
「……お互い二人連れで――親和は、人当たり良いから……割と、和やかだったんだけど――」
その時、隣にいたのが――立岩さんだったようだ。
「今と全然違う派手なカッコで、結構面倒くさく絡んできてさ……。オレは、逃げたかったんだけど、店でゴタゴタしたくなくてよ……まあ、営業だと思って相手してたんだよ。……そしたら――」
――え、待って、キミ、見たコトあるかも。
――そうですか。
――……入社式の時、見たかも。
――え?
ギョッとして彼女を見やれば、口元を上げて返された。
その、横にあったホクロを――今、思い出した。
「……その時、マズいと思ったんだけど――一緒にいた、あの女の連れが、親和と割と気が合ったみてぇで……」
結局、当たり障りのないレベルで相手をしていたが――もしかしたら、良いように取られるようなコトを言ったのかもしれない。
「――でもよ、マトモに会ったのは、その時だけで――オレは、大阪だったし……」
「アンタ、自分の名前は言ったの」
「いや。……ただ、親和に呼ばれてたから……覚えてたのかも」
江陽は、そう言って、大きく息を吐いた。
「……悪い……。――ただ、今の今まで、記憶に引っかかりもしなかったレベルだった」
「――……それは、もう、彼女のとらえ方としか言えないわ」
おそらく、その後、人事部という自分の立場で、調べ上げたのだろう。
江陽という男を――手に入れるために。
「……でも、思い出したって言えば、きっと、良いように取られるわよ」
「――ああ」
私は、座り込んだ江陽の隣に、腰を下ろした。
「……アンタ、昔みたいに、手当たり次第に突っかかっていたら、こんな事にはならなかったのかもしれないのにね……」
「――成長したんだよ」
「そこは、逆効果だったみたいだけど」
江陽の見目で、人当たりが良くなったら――それは、勘違いされても、仕方ない部分はあったのかもしれない。
「――……まあ……原因がわかって、良かったじゃないの」
「……良いのかよ、それ」
「少なくとも、同じ轍は踏まないでしょう。――それとも、アンタ、そこまでバカ?」
「……おい」
江陽は、顔を上げ、私をのぞき込む。
「……相変わらず、容赦無ぇのな」
「アンタ相手に、容赦する訳無いでしょう」
すると、ヤツは、苦笑い気味に口元を上げる。
――私を、優しく見つめたまま。
瞬間、不本意に心臓が跳ね上がってしまうが、ギュッと、手を握り締めて耐えた。
「――羽津紀」
「……何」
江陽は、その手を、そっと包む込む。
そして、少しだけ力を入れると、私に言った。