大嫌い同士の大恋愛
26.ようやく、素直になった?
「――そういう訳で……申し訳ありませんが、一旦、部屋を探すのは止めてもらっても良いでしょうか……」
翌日、おうちデートという名目で、部屋にやってきた片桐さんに、江陽との話を伝えると、私は正座をして頭を下げた。
「……そう。……三ノ宮くんも、必死だね」
彼は、そう言って、出したコーヒーに口をつける。
その間の緊張感は、半端ない。
何を言われても、私の責任だ。真摯に受け止める覚悟はできている。
――けれど、片桐さんを傷つけるだろう事は、簡単に想像がついた。
無意識に握り締めた両手は、小刻みに震えている。
「羽津紀さん、キミが決める事だよ。――キミの気持ちなんだから」
「……ハ、ハイ……」
すべてお見通しのように言われ、気まずさは更に上昇。
すると、スッと片桐さんの手が視界に入ったと思ったら、そのまま頬に触れ、顔を上げさせられた。
――あれ……キス、される?
けれど、苦笑いで返され、彼は、あっさりと手を離した。
「今のキミの気持ちがどうなのかは、僕にはわからないよ。――でも、僕との結婚に関しては、前向きに考えている?」
「――え、あ、あの……」
その問いかけに戸惑いを見せると、片桐さんは、眉を下げた。
「――そう」
「か、片桐さん?」
「ゴメンね、答えにくい事聞いて」
「いえ……私こそ、すみません……」
「まあ、キミが最初から、素直にうなづくとは思ってないしね」
彼は、平然と言うと、口元を上げた。
「だから、こうやって、少しずつ包囲網を敷いているんだけど」
「――え」
「久保さんが言ってたよね。――キミ、恋愛初心者どころか、赤ちゃんレベルだって」
「そ、それは、聖が勝手に……!」
恥ずかしい事を指摘され、身体中の血が沸騰しそうだ。
思わずうつむくと、片桐さんは、優しく頭を撫でた。
「バカにしてるんじゃないよ。むしろ、大歓迎だから」
「え」
チラリとうつむいたまま視線を上げる。
すると、目を丸くした彼が視界に入り、私は、顔を上げた。
「あ、あの?」
――何か、おかしな事をしただろうか?
不安になってしまうが、すぐに、否定された。
「ダメだよ、そんな表情したら。――お膳立てされてると思うでしょ」
「――……っ……!」
どうやら、いやらしい意味に取られたようで、彼をにらみつけてしまった。
「片桐さんっ!」
クスクスと笑い、彼は、再びコーヒーに口をつける。
私も、同じように、冷静になろうと、自分のカップのコーヒーを飲み干した。
「でもさ……三ノ宮くん、どうやって話をつけるっていうんだろうね」
「……それは……そうなんですけど……」
勢いよく部屋を出て行ってしまった江陽を引き留める事もできず、結局、ヤツが何を企んでいるのか、わからずじまいだったのだ。
「あまり……危険な真似はしてほしくないんですが……」
「――そうだよね。でも、羽津紀さんも、同じだから」
「え」
「まだ、キミが安全だという保障は無いんだ。だから、こうやって、僕が来ているって、忘れてないよね?」
私は、口元を引き、うなづいた。
そう。こうやって、片桐さんが、わざわざ日中に部屋まで来てくれているのも、休日だからと言って、安心できないからで――。
「……すみません……」
申し訳無さに、頭を下げると、彼は、少しだけ眉を下げて微笑んだ。
翌日、おうちデートという名目で、部屋にやってきた片桐さんに、江陽との話を伝えると、私は正座をして頭を下げた。
「……そう。……三ノ宮くんも、必死だね」
彼は、そう言って、出したコーヒーに口をつける。
その間の緊張感は、半端ない。
何を言われても、私の責任だ。真摯に受け止める覚悟はできている。
――けれど、片桐さんを傷つけるだろう事は、簡単に想像がついた。
無意識に握り締めた両手は、小刻みに震えている。
「羽津紀さん、キミが決める事だよ。――キミの気持ちなんだから」
「……ハ、ハイ……」
すべてお見通しのように言われ、気まずさは更に上昇。
すると、スッと片桐さんの手が視界に入ったと思ったら、そのまま頬に触れ、顔を上げさせられた。
――あれ……キス、される?
けれど、苦笑いで返され、彼は、あっさりと手を離した。
「今のキミの気持ちがどうなのかは、僕にはわからないよ。――でも、僕との結婚に関しては、前向きに考えている?」
「――え、あ、あの……」
その問いかけに戸惑いを見せると、片桐さんは、眉を下げた。
「――そう」
「か、片桐さん?」
「ゴメンね、答えにくい事聞いて」
「いえ……私こそ、すみません……」
「まあ、キミが最初から、素直にうなづくとは思ってないしね」
彼は、平然と言うと、口元を上げた。
「だから、こうやって、少しずつ包囲網を敷いているんだけど」
「――え」
「久保さんが言ってたよね。――キミ、恋愛初心者どころか、赤ちゃんレベルだって」
「そ、それは、聖が勝手に……!」
恥ずかしい事を指摘され、身体中の血が沸騰しそうだ。
思わずうつむくと、片桐さんは、優しく頭を撫でた。
「バカにしてるんじゃないよ。むしろ、大歓迎だから」
「え」
チラリとうつむいたまま視線を上げる。
すると、目を丸くした彼が視界に入り、私は、顔を上げた。
「あ、あの?」
――何か、おかしな事をしただろうか?
不安になってしまうが、すぐに、否定された。
「ダメだよ、そんな表情したら。――お膳立てされてると思うでしょ」
「――……っ……!」
どうやら、いやらしい意味に取られたようで、彼をにらみつけてしまった。
「片桐さんっ!」
クスクスと笑い、彼は、再びコーヒーに口をつける。
私も、同じように、冷静になろうと、自分のカップのコーヒーを飲み干した。
「でもさ……三ノ宮くん、どうやって話をつけるっていうんだろうね」
「……それは……そうなんですけど……」
勢いよく部屋を出て行ってしまった江陽を引き留める事もできず、結局、ヤツが何を企んでいるのか、わからずじまいだったのだ。
「あまり……危険な真似はしてほしくないんですが……」
「――そうだよね。でも、羽津紀さんも、同じだから」
「え」
「まだ、キミが安全だという保障は無いんだ。だから、こうやって、僕が来ているって、忘れてないよね?」
私は、口元を引き、うなづいた。
そう。こうやって、片桐さんが、わざわざ日中に部屋まで来てくれているのも、休日だからと言って、安心できないからで――。
「……すみません……」
申し訳無さに、頭を下げると、彼は、少しだけ眉を下げて微笑んだ。