大嫌い同士の大恋愛
28.お願いだから、死なないで
思う存分、江陽の頭を撫で回した後、私は思い出し、ヤツに尋ねた。
「そう言えば、アンタ、何か急いでたんじゃないの」
「あ、ああ。――そうだった」
「忘れてるんじゃないわよ」
「いや、あの女の件だ」
「え」
不意打ちで言われ、思わず身構えてしまった。
江陽は、苦笑いで、私の頭を小突く。
「――……昔、ストーカー被害に遭った時の弁護士に、連絡ついたんだよ。その人、これから時間作ってくれるって言うから、会いに行く」
「――え」
過去にも、被害に遭ったとは聞いたが――弁護士まで出るレベルだったとは。
「……それで……どうする気よ」
「その先生と、オレと――あの女。話し合いできれば良いだろうが――ダメなら、被害届出して、接近禁止命令出してもらう」
「――引き下がると思う……?」
立岩さんを思い出し、私は、眉を寄せる。
――あの執着の仕方は、話し合いであきらめがつくのだろうか。
「――引き下がらせてやる。……もう、二度と、お前を傷つけるような真似はさせねぇから」
けれど、江陽は、そうハッキリと言い切った。
それに頼もしさを感じてしまうが、私は、視線を逸らして返す。
「……でも、危険な真似だけはしないでよ。逃げる事も考えなさい」
「――じゃあ、逃げる時は、羽津紀も一緒だからな」
「何でよ」
「オレが離れたくねぇからに決まってるだろ」
ストレートもストレート。
返事も思い浮かばない程に、真っ直ぐに言われ、私は、顔中――たぶん、全身が真っ赤だ。
それに気づいたのか、江陽は、笑う。
「――真っ赤だな」
「だっ……黙れ、こうちゃん!」
思わず、昔の呼び名に戻ってしまうが、ヤツは、うれしそうに抱き着いてきた。
「ちょっ……」
「もっと、呼べよ」
「は?」
「――うーちゃん」
耳元で呼ばれたのは、昔の呼び名――なのに、全身がぞわり、と、反応してしまう。
低く脳内まで届くような声で囁くと、江陽は、ニヤリ、と、のぞき込む。
「――何だ、感じたのかよ」
「――……っ……バッ……カ、じゃないっ……のっ……!!!!」
こんな風に良いようにあしらわれるのは、自分の恋愛スキルの低さ故。
それが何だか腹立たしくなり、私は、怒りに任せてヤツの両頬を思い切りつねる。
「痛っ……!!!」
「いい加減にしなさい、江陽!」
「テ……メ、このっ、羽津紀っ!」
江陽は、力任せに私の手首を掴み、どうにか頬から引きはがす。
私は、ヤツの手を振り払い、にらみ上げた。
「……ンだよ」
「――三度目、喰らいたいワケ?!」
「――っ……やめろ、バカッ!」
言いながら、足を上げようとする私を、江陽は、あせったように止める。
――二度あることは三度ある、とは、ならずに済み、お互い一歩下がって距離を取ると、二人、大きく息を吐いた。
「そう言えば、アンタ、何か急いでたんじゃないの」
「あ、ああ。――そうだった」
「忘れてるんじゃないわよ」
「いや、あの女の件だ」
「え」
不意打ちで言われ、思わず身構えてしまった。
江陽は、苦笑いで、私の頭を小突く。
「――……昔、ストーカー被害に遭った時の弁護士に、連絡ついたんだよ。その人、これから時間作ってくれるって言うから、会いに行く」
「――え」
過去にも、被害に遭ったとは聞いたが――弁護士まで出るレベルだったとは。
「……それで……どうする気よ」
「その先生と、オレと――あの女。話し合いできれば良いだろうが――ダメなら、被害届出して、接近禁止命令出してもらう」
「――引き下がると思う……?」
立岩さんを思い出し、私は、眉を寄せる。
――あの執着の仕方は、話し合いであきらめがつくのだろうか。
「――引き下がらせてやる。……もう、二度と、お前を傷つけるような真似はさせねぇから」
けれど、江陽は、そうハッキリと言い切った。
それに頼もしさを感じてしまうが、私は、視線を逸らして返す。
「……でも、危険な真似だけはしないでよ。逃げる事も考えなさい」
「――じゃあ、逃げる時は、羽津紀も一緒だからな」
「何でよ」
「オレが離れたくねぇからに決まってるだろ」
ストレートもストレート。
返事も思い浮かばない程に、真っ直ぐに言われ、私は、顔中――たぶん、全身が真っ赤だ。
それに気づいたのか、江陽は、笑う。
「――真っ赤だな」
「だっ……黙れ、こうちゃん!」
思わず、昔の呼び名に戻ってしまうが、ヤツは、うれしそうに抱き着いてきた。
「ちょっ……」
「もっと、呼べよ」
「は?」
「――うーちゃん」
耳元で呼ばれたのは、昔の呼び名――なのに、全身がぞわり、と、反応してしまう。
低く脳内まで届くような声で囁くと、江陽は、ニヤリ、と、のぞき込む。
「――何だ、感じたのかよ」
「――……っ……バッ……カ、じゃないっ……のっ……!!!!」
こんな風に良いようにあしらわれるのは、自分の恋愛スキルの低さ故。
それが何だか腹立たしくなり、私は、怒りに任せてヤツの両頬を思い切りつねる。
「痛っ……!!!」
「いい加減にしなさい、江陽!」
「テ……メ、このっ、羽津紀っ!」
江陽は、力任せに私の手首を掴み、どうにか頬から引きはがす。
私は、ヤツの手を振り払い、にらみ上げた。
「……ンだよ」
「――三度目、喰らいたいワケ?!」
「――っ……やめろ、バカッ!」
言いながら、足を上げようとする私を、江陽は、あせったように止める。
――二度あることは三度ある、とは、ならずに済み、お互い一歩下がって距離を取ると、二人、大きく息を吐いた。