大嫌い同士の大恋愛
その後、しばらく放心状態のように座っていると、後を追ってきた聖が、私の隣に来て尋ねた。
「羽津紀、江陽クンと立岩さんは……」
それには、首を振って返す。
「……そう。……羽津紀は、大丈夫……?」
「……聖……」
のぞき込んできた聖は、私の顔を見ると眉を下げる。
「――……大丈夫なハズ、無いよねぇ……」
「……聖……」
その空気に、張り詰めていたものが、プツリ、と、切れる。
「――……何で、江陽なのよ……っ……!」
私は、今までくすぶっていたものを、吐き出すように、聖に縋り付く。
それを受け止め、彼女は、私を抱き締めてくれた。
「……そうだねぇ……」
「男なんて、いくらでもいるでしょ!よりによって、アイツを好きにならなくても、良いじゃない!」
「……羽津紀」
聖は、なだめるように私の背中をたたく。
「……でもね、気持ちだけは――理屈じゃどうにもならないんだよ?」
「――……わかってるっ!……でもっ……」
江陽は――
――私のものなのに。
そう、よぎった瞬間、顔を上げる。
「羽津紀?」
私は、無意識に浮かんだその言葉に、青くなる。
――嫌。
――これじゃ……立岩さんと同じじゃない。
――……なら……一歩間違えば……彼女は、私、なのか。
「羽津紀ちゃんっ!」
悲壮な声で名を呼ばれ、そちらへ顔を向けると、亜澄さんが、三ノ宮社長に支えられながら小走りにやって来た。
「亜澄さん。……三ノ宮社長」
私と聖は、ベンチから立ち上がると、二人に頭を下げた。
「申し訳ありません。突然……」
「いや、それは良いんですが――江陽は、一体、どうしたんですか」
さすがに、病院に呼ばれるという異常事態に、動揺しているようだ。
三ノ宮社長は、青い顔をしながら、私に尋ねる。
「――……申し訳ありません。……すべては、私が原因です」
「え」
こうなってしまったのは、江陽が、私を好きだと彼女に知られてしまったせい。
――私さえ、ちゃんと、アイツを振っていれば――。
「違うでしょ、羽津紀!」
けれど、聖に肩を揺すられ、我に返る。
「聖」
「――ええっと、キミは」
割り込んできた彼女に、三ノ宮社長は、面食らう。
「久保聖です。羽津紀の同期で、親友です」
「事情を知っているんですか」
「――ハイ。私から、ご説明した方が、早いかと思います」
しん、と、静まり返った病院の空気に、余所行き仕様の聖の声が響く。
全国トップ企業の社長と対面しているのに、引くそぶりも見せない彼女を頼もしく感じた。
「聖」
「羽津紀は、ちょっと休んでなよ。――まだ、震えてるしさ」
そう言うと、私を無理矢理ベンチに逆戻りさせ、聖は、三ノ宮夫妻にこれまでの経緯を話す。
さすがに、殺人未遂には真っ青になりながら憤ってくれたが、もう、私の判断で終わった事だと、無理矢理納得してもらった。
「――……何で……あの子ばかりが……こんな目に遭わなくては、ならないの……」
「……亜澄さん?」
すると、話を聞き終えた亜澄さんが、ポツリと、こぼす。
「羽津紀、江陽クンと立岩さんは……」
それには、首を振って返す。
「……そう。……羽津紀は、大丈夫……?」
「……聖……」
のぞき込んできた聖は、私の顔を見ると眉を下げる。
「――……大丈夫なハズ、無いよねぇ……」
「……聖……」
その空気に、張り詰めていたものが、プツリ、と、切れる。
「――……何で、江陽なのよ……っ……!」
私は、今までくすぶっていたものを、吐き出すように、聖に縋り付く。
それを受け止め、彼女は、私を抱き締めてくれた。
「……そうだねぇ……」
「男なんて、いくらでもいるでしょ!よりによって、アイツを好きにならなくても、良いじゃない!」
「……羽津紀」
聖は、なだめるように私の背中をたたく。
「……でもね、気持ちだけは――理屈じゃどうにもならないんだよ?」
「――……わかってるっ!……でもっ……」
江陽は――
――私のものなのに。
そう、よぎった瞬間、顔を上げる。
「羽津紀?」
私は、無意識に浮かんだその言葉に、青くなる。
――嫌。
――これじゃ……立岩さんと同じじゃない。
――……なら……一歩間違えば……彼女は、私、なのか。
「羽津紀ちゃんっ!」
悲壮な声で名を呼ばれ、そちらへ顔を向けると、亜澄さんが、三ノ宮社長に支えられながら小走りにやって来た。
「亜澄さん。……三ノ宮社長」
私と聖は、ベンチから立ち上がると、二人に頭を下げた。
「申し訳ありません。突然……」
「いや、それは良いんですが――江陽は、一体、どうしたんですか」
さすがに、病院に呼ばれるという異常事態に、動揺しているようだ。
三ノ宮社長は、青い顔をしながら、私に尋ねる。
「――……申し訳ありません。……すべては、私が原因です」
「え」
こうなってしまったのは、江陽が、私を好きだと彼女に知られてしまったせい。
――私さえ、ちゃんと、アイツを振っていれば――。
「違うでしょ、羽津紀!」
けれど、聖に肩を揺すられ、我に返る。
「聖」
「――ええっと、キミは」
割り込んできた彼女に、三ノ宮社長は、面食らう。
「久保聖です。羽津紀の同期で、親友です」
「事情を知っているんですか」
「――ハイ。私から、ご説明した方が、早いかと思います」
しん、と、静まり返った病院の空気に、余所行き仕様の聖の声が響く。
全国トップ企業の社長と対面しているのに、引くそぶりも見せない彼女を頼もしく感じた。
「聖」
「羽津紀は、ちょっと休んでなよ。――まだ、震えてるしさ」
そう言うと、私を無理矢理ベンチに逆戻りさせ、聖は、三ノ宮夫妻にこれまでの経緯を話す。
さすがに、殺人未遂には真っ青になりながら憤ってくれたが、もう、私の判断で終わった事だと、無理矢理納得してもらった。
「――……何で……あの子ばかりが……こんな目に遭わなくては、ならないの……」
「……亜澄さん?」
すると、話を聞き終えた亜澄さんが、ポツリと、こぼす。