大嫌い同士の大恋愛
30.やっぱり、大嫌い
徐々に朝日が昇って、カーテンの隙間から日が差してくる。
江陽が病院に運ばれ――もう、三日だ。
その間、ヤツは、一度も目を覚ましてはいない。
検査では異常は無いはずなのにと、医者も、首をかしげるばかりだ。
私は、マンションに帰る事無く、ずっと、ここにいる。
最低限の服などは、聖が気を利かせて持って来てくれていた。
――羽津紀は、何も気にしなくて良いよ。他はアタシに任せてさ、今は江陽クンのそばにいてあげて。
彼女の厚意に甘えて、会社への休みの届け出や、不在の間の部屋のいろいろなど、今は、すべて投げ出している状態だ。
――今までだったら、絶対に考えられないのに。
――今は――何を置いても、そばにいてあげないといけないと思うのだ。
――もう、それは――江陽が、私にとって、特別なのだという事。
――……大嫌いだろうが、大好きだろうが……感情がこんなに揺さぶられるのは――
結局、コイツだけなのだ。
部屋のドアがノックされ、振り返ると、三ノ宮社長と亜澄さんが、揃って顔を出した。
あれから、朝晩と、容態を確認しに来るが、私は毎回それに首を振るだけだ。
すると、隣に来た亜澄さんが、申し訳無さそうに言う。
「ねえ、羽津紀ちゃん。江陽についていてくれるのは、うれしいんだけれど……あなた、お仕事は……」
そう尋ねられるが、私は、曖昧に微笑んで返す。
「……一応、私から、七海社長には状況を説明しているけれど――キミも、会社員だよ」
三ノ宮社長が、少しだけたしなめるように言うが、それでも、首は縦には振らない。
「――……良いんです……。……江陽……さん、起きた時に私がいないと、また、いろいろと文句言うでしょうから――」
――何より――私が、目が覚めた時、そばにいたいと思ったのだ。
「……でも、羽津紀ちゃんまで身体壊したら、それこそ、江陽は文句言うわよ……?」
「大丈夫です。――そんなに、ヤワじゃありません」
「――……羽津紀ちゃん……」
二人は、微動だにしない私を、なだめようとするのをあきらめたようだ。
そのまま、そっと、部屋を出て行く。
私は、それを背中で見送り――視線は、江陽から逸らさない。
入ってくる日差しに目を細めながらも、ヤツを見つめる。
「――……ねえ……こうちゃん、朝だってば……」
私の言葉に――何の反応も無い。
「……ねえ、こうちゃん、起きてってばっ……!もう、三日も寝てるのよ?!いい加減、起きなさいよっ……!」
思わず、肩を揺すりたくなるが、どうにか堪える。
浮かんでくる涙は――もう、止める術もなく、流れていくだけだ。
私は、うつむきながら、声を絞り出す。
「――……お願いだから……起きてよ……こうちゃん……」
「――……ンだよ、うるせぇな――……」
瞬間、耳に届いた言葉に、顔を上げる。
目の前の江陽は、ゆっくりと顔をしかめながらも起き上がり――私を見て、ギョッとした表情を見せた。
「う、羽津紀?お、おい、何、泣いてんだよ?!」
「う……うるさい、バカ!!」
呑気に慌てる江陽に、私は、思い切り抱き着いた。
江陽が病院に運ばれ――もう、三日だ。
その間、ヤツは、一度も目を覚ましてはいない。
検査では異常は無いはずなのにと、医者も、首をかしげるばかりだ。
私は、マンションに帰る事無く、ずっと、ここにいる。
最低限の服などは、聖が気を利かせて持って来てくれていた。
――羽津紀は、何も気にしなくて良いよ。他はアタシに任せてさ、今は江陽クンのそばにいてあげて。
彼女の厚意に甘えて、会社への休みの届け出や、不在の間の部屋のいろいろなど、今は、すべて投げ出している状態だ。
――今までだったら、絶対に考えられないのに。
――今は――何を置いても、そばにいてあげないといけないと思うのだ。
――もう、それは――江陽が、私にとって、特別なのだという事。
――……大嫌いだろうが、大好きだろうが……感情がこんなに揺さぶられるのは――
結局、コイツだけなのだ。
部屋のドアがノックされ、振り返ると、三ノ宮社長と亜澄さんが、揃って顔を出した。
あれから、朝晩と、容態を確認しに来るが、私は毎回それに首を振るだけだ。
すると、隣に来た亜澄さんが、申し訳無さそうに言う。
「ねえ、羽津紀ちゃん。江陽についていてくれるのは、うれしいんだけれど……あなた、お仕事は……」
そう尋ねられるが、私は、曖昧に微笑んで返す。
「……一応、私から、七海社長には状況を説明しているけれど――キミも、会社員だよ」
三ノ宮社長が、少しだけたしなめるように言うが、それでも、首は縦には振らない。
「――……良いんです……。……江陽……さん、起きた時に私がいないと、また、いろいろと文句言うでしょうから――」
――何より――私が、目が覚めた時、そばにいたいと思ったのだ。
「……でも、羽津紀ちゃんまで身体壊したら、それこそ、江陽は文句言うわよ……?」
「大丈夫です。――そんなに、ヤワじゃありません」
「――……羽津紀ちゃん……」
二人は、微動だにしない私を、なだめようとするのをあきらめたようだ。
そのまま、そっと、部屋を出て行く。
私は、それを背中で見送り――視線は、江陽から逸らさない。
入ってくる日差しに目を細めながらも、ヤツを見つめる。
「――……ねえ……こうちゃん、朝だってば……」
私の言葉に――何の反応も無い。
「……ねえ、こうちゃん、起きてってばっ……!もう、三日も寝てるのよ?!いい加減、起きなさいよっ……!」
思わず、肩を揺すりたくなるが、どうにか堪える。
浮かんでくる涙は――もう、止める術もなく、流れていくだけだ。
私は、うつむきながら、声を絞り出す。
「――……お願いだから……起きてよ……こうちゃん……」
「――……ンだよ、うるせぇな――……」
瞬間、耳に届いた言葉に、顔を上げる。
目の前の江陽は、ゆっくりと顔をしかめながらも起き上がり――私を見て、ギョッとした表情を見せた。
「う、羽津紀?お、おい、何、泣いてんだよ?!」
「う……うるさい、バカ!!」
呑気に慌てる江陽に、私は、思い切り抱き着いた。