大嫌い同士の大恋愛
事情を聞き終えると、江陽は、大きく息を吐くが、私に抱き着いたままだ。
「……とにかく、お互い無事で良かった、か」
「アンタは、無事じゃないでしょ」
ヤツの頭に巻き付けられた、真白な包帯を見やり、唇を噛む。
「……こんな風になるなら――さっさと、警察に訴えれば良かった……」
「羽津紀」
企画の為と思っていたのに、まさか、生死がかかわるほどの事になるなんて。
「……ごめんなさい……江陽……」
「……別に、お前が悪い訳じゃ無ぇだろ」
トントン、と、抱き着いたまま、私の背中を、江陽は、優しくたたく。
まるで、落ち着かせるように。
その瞬間、止まっていた涙が、再び一気にあふれた。
「羽津紀」
「――……ごめ、ん、なさいっ……!」
「おい、羽津紀、落ち着けって」
「だってっ……!」
――結局、私は、いつだって――他人の気持ちを軽く考える。
立岩さんは、本気で――それこそ、自分の命をかけるほどに、江陽に執着していたのに。
私は、自分の事を優先してしまった。
そのせいで、江陽は、こんな目に遭って――……。
「ごめんなさい……こうちゃん……!――ごめんなさいっ……!」
江陽は、泣き崩れる私の身体を支えると、苦笑いでのぞき込む。
「……謝るなって……。――フラれてるみてぇだろ」
そして、茶化すようにそう言うと、私の背中を、あやすようにさする。
私は、それを拒否するように、首を振った。
――ごめんなさい、の、理由は――まだ、あるのだから。
「だって――……私も――立岩さんのようになってしまったからっ……」
次々と、自分の中に生まれた感情たちに戸惑うが、それだけは――自分自身が許せなかった。
いくら本気で江陽を好きだろうが、身勝手にコイツを傷つけた彼女と、同じ思いを抱くなんて――……。
「――羽津紀?」
顔を上げた江陽は、そっと、私を離すと、視線を合わせるようにのぞき込んだ。
「何言ってんだよ。羽津紀は、あの女とは違う」
「違わない!」
「ンな訳ねぇだろ」
「違わないの!――だってっ……」
私は、なだめる江陽に、イヤイヤをするように首を振る。
「羽津……」
そして――ヤツの言葉を遮るように、
「――江陽は、私のものなのに、って、思っちゃったんだものっ……!」
そう、叫んでしまった。
瞬間――キツく、抱き締められる感触。
私は、固まったまま、視線だけ江陽に向けた。
「――……こう、よ……?」
「――……マジか」
ヤツの表情は見えない。
――けれど――何で、どこかうれしそうに聞こえるのだ。
「……だから……ごめんなさい……」
――私も、いつか、彼女のように江陽に危害を加えるまでになるかもしれない。
そう続けると、ヤツは、私を離し、真っ直ぐに見つめる。
その視線から、逃げられなかったし――逃げようとは、思わなかった。
――もう、ちゃんと――向き合わなければ。
そんな思いが、よぎった。
「……とにかく、お互い無事で良かった、か」
「アンタは、無事じゃないでしょ」
ヤツの頭に巻き付けられた、真白な包帯を見やり、唇を噛む。
「……こんな風になるなら――さっさと、警察に訴えれば良かった……」
「羽津紀」
企画の為と思っていたのに、まさか、生死がかかわるほどの事になるなんて。
「……ごめんなさい……江陽……」
「……別に、お前が悪い訳じゃ無ぇだろ」
トントン、と、抱き着いたまま、私の背中を、江陽は、優しくたたく。
まるで、落ち着かせるように。
その瞬間、止まっていた涙が、再び一気にあふれた。
「羽津紀」
「――……ごめ、ん、なさいっ……!」
「おい、羽津紀、落ち着けって」
「だってっ……!」
――結局、私は、いつだって――他人の気持ちを軽く考える。
立岩さんは、本気で――それこそ、自分の命をかけるほどに、江陽に執着していたのに。
私は、自分の事を優先してしまった。
そのせいで、江陽は、こんな目に遭って――……。
「ごめんなさい……こうちゃん……!――ごめんなさいっ……!」
江陽は、泣き崩れる私の身体を支えると、苦笑いでのぞき込む。
「……謝るなって……。――フラれてるみてぇだろ」
そして、茶化すようにそう言うと、私の背中を、あやすようにさする。
私は、それを拒否するように、首を振った。
――ごめんなさい、の、理由は――まだ、あるのだから。
「だって――……私も――立岩さんのようになってしまったからっ……」
次々と、自分の中に生まれた感情たちに戸惑うが、それだけは――自分自身が許せなかった。
いくら本気で江陽を好きだろうが、身勝手にコイツを傷つけた彼女と、同じ思いを抱くなんて――……。
「――羽津紀?」
顔を上げた江陽は、そっと、私を離すと、視線を合わせるようにのぞき込んだ。
「何言ってんだよ。羽津紀は、あの女とは違う」
「違わない!」
「ンな訳ねぇだろ」
「違わないの!――だってっ……」
私は、なだめる江陽に、イヤイヤをするように首を振る。
「羽津……」
そして――ヤツの言葉を遮るように、
「――江陽は、私のものなのに、って、思っちゃったんだものっ……!」
そう、叫んでしまった。
瞬間――キツく、抱き締められる感触。
私は、固まったまま、視線だけ江陽に向けた。
「――……こう、よ……?」
「――……マジか」
ヤツの表情は見えない。
――けれど――何で、どこかうれしそうに聞こえるのだ。
「……だから……ごめんなさい……」
――私も、いつか、彼女のように江陽に危害を加えるまでになるかもしれない。
そう続けると、ヤツは、私を離し、真っ直ぐに見つめる。
その視線から、逃げられなかったし――逃げようとは、思わなかった。
――もう、ちゃんと――向き合わなければ。
そんな思いが、よぎった。