大嫌い同士の大恋愛
「あれぇ?ココじゃなかった?」
「もう一度、管理データ、のぞいてみる?」
ドアの外での会話が、耳を通り過ぎていく。
「頼むから、黙ってろ」
そう囁いた、記憶よりも低い声に、全身がビクリと跳ね上がる。
――何よ、コレ!!
「まだ帰ってないのかなぁ?」
女性達が去って行く気配はするが、解放される気配も無い。
ようやく頭が回り始めたが、男に力一杯抱き締められている状態では、身動きも取れない。
そして、江陽の呼吸が、徐々に荒くなるのに気づくと、私は、条件反射のように――
思いきり、ヤツの股間を蹴り上げた。
「――っ……!!!???」
瞬間、全身が解放され、私は、怒りにまかせ右手を江陽に向けて振り上げる。
けれど、かろうじて手首を掴まれ、ビンタは失敗に終わった。
江陽は、屈んだ体勢のまま、私をにらむ。
「……っ、な、にして、くれてんだっ……!つか、い、モンに、ならなくなったらっ、どうして、くれるっ!」
「何してくれてんのは、アンタでしょうがっ!」
お互いに、にらみ合って硬直状態。
すると、インターフォンが、再び鳴り響く。
「羽津紀ー、どうかしたのー?何か、騒いでたけどー」
聖の声がして、私は、江陽を見やる。
ヤツは、眉を寄せながら、首を振った。
どうやら、まだ、ダメージが回復しないようだ。
――けれど、聖を追い返す訳にも……。
「羽津紀、いるの?」
そう悩んでいると、止める間もなくドアノブが回り、青くなる。
――鍵、開けっ放し!
「ヤダ、羽津紀、危ないよー。ドア、開けっぱじゃ……」
言いながら入って来た聖は、玄関先の私達の状況を目を丸くして見る。
「え、アレ⁉三ノ宮くん、何で?」
「えっと、あの、聖――コレは……」
どうやって言いくるめよう。
急いで頭を回すが、屈んだ体勢の江陽を見やり、聖は息をのんだ。
「聖?」
「ウソ、二人、玄関先でエッチしようとしたの⁉」
「バカ言うのも大概にしなさいっっ!!!!」
冗談なのか、本気なのかもわからないコトを言い出した聖は、江陽を眉を寄せて見やると、頬に手を当ててため息をついた。
「ダメだよ、三ノ宮くん。羽津紀は処女なんだから、ちゃんと、シチュエーションってモノを――」
「ひっ……聖!!!」
私は、真っ青になって、聖を引きずって部屋の外に出た。
「なっ、なっ、なっ……何てコト言うのよ!」
「えー、だって、ホントのコトじゃない。三ノ宮くんには、ちゃんと、大事にしてもらわなきゃ」
「そういうんじゃないの!!!」
「――勝手に話を捏造するんじゃねぇ」
会話に入ってきた江陽は、玄関のドアを開け、少しだけ、前かがみでしかめ面をしている。
「――じゃあ、何で、前かがみになってるの?」
純粋な疑問に、私は、答えに詰まってしまう。
「コ、コレは深い事情が……」
「関係無ぇだろうが!」
「関係あるわよ!羽津紀は、アタシの大事な大事な友達なんだからー!」
その言葉に感動しながらも、はた、と、気づく。
――ここ、外じゃない!さっきの女性達が戻って来てしまう!
私は、聖を玄関の中に押し込み、代わりに江陽を引きずり出す。
「おい、うーちゃん!」
「だから、その呼び方するな!いつまで、子供の頃を引きずってるのよ!」
すると、ヤツは、う、と、固まった。
――そして。
「――……じゃあ……羽津紀――」
瞬間、心臓が跳ね上がる。
いくら江陽とはいえ、男に名前を呼び捨てにされるのは、この歳になると意識してしまうじゃない。
自分が呼び捨てにしている事を棚に上げ、私は、江陽をにらみつける。
「何で、名前呼びよ」
「今さら、名木沢サン、は、違和感あるんだよ」
「会社じゃ呼んでるじゃない」
「仕事は仕事だろ」
一瞬、正論に怯んでしまう。
けれど、それはそれ、だ。
「とにかく、もう、部屋に戻りなさい!アンタを部屋に入れる筋合いなんて無い!」
私は、そう言って、江陽を締め出し、ドアを閉める。
そして、オロオロしている聖を振り返ると、目を丸くされる。
「……聖?」
「……羽津紀……顔、真っ赤だよ……?」
「気っ……気のせいよっ……‼」
私は、顔を逸らしながら、中に入る。
――まるで、江陽を意識しているようで――単純な自分に、心底、嫌気が差した。
「もう一度、管理データ、のぞいてみる?」
ドアの外での会話が、耳を通り過ぎていく。
「頼むから、黙ってろ」
そう囁いた、記憶よりも低い声に、全身がビクリと跳ね上がる。
――何よ、コレ!!
「まだ帰ってないのかなぁ?」
女性達が去って行く気配はするが、解放される気配も無い。
ようやく頭が回り始めたが、男に力一杯抱き締められている状態では、身動きも取れない。
そして、江陽の呼吸が、徐々に荒くなるのに気づくと、私は、条件反射のように――
思いきり、ヤツの股間を蹴り上げた。
「――っ……!!!???」
瞬間、全身が解放され、私は、怒りにまかせ右手を江陽に向けて振り上げる。
けれど、かろうじて手首を掴まれ、ビンタは失敗に終わった。
江陽は、屈んだ体勢のまま、私をにらむ。
「……っ、な、にして、くれてんだっ……!つか、い、モンに、ならなくなったらっ、どうして、くれるっ!」
「何してくれてんのは、アンタでしょうがっ!」
お互いに、にらみ合って硬直状態。
すると、インターフォンが、再び鳴り響く。
「羽津紀ー、どうかしたのー?何か、騒いでたけどー」
聖の声がして、私は、江陽を見やる。
ヤツは、眉を寄せながら、首を振った。
どうやら、まだ、ダメージが回復しないようだ。
――けれど、聖を追い返す訳にも……。
「羽津紀、いるの?」
そう悩んでいると、止める間もなくドアノブが回り、青くなる。
――鍵、開けっ放し!
「ヤダ、羽津紀、危ないよー。ドア、開けっぱじゃ……」
言いながら入って来た聖は、玄関先の私達の状況を目を丸くして見る。
「え、アレ⁉三ノ宮くん、何で?」
「えっと、あの、聖――コレは……」
どうやって言いくるめよう。
急いで頭を回すが、屈んだ体勢の江陽を見やり、聖は息をのんだ。
「聖?」
「ウソ、二人、玄関先でエッチしようとしたの⁉」
「バカ言うのも大概にしなさいっっ!!!!」
冗談なのか、本気なのかもわからないコトを言い出した聖は、江陽を眉を寄せて見やると、頬に手を当ててため息をついた。
「ダメだよ、三ノ宮くん。羽津紀は処女なんだから、ちゃんと、シチュエーションってモノを――」
「ひっ……聖!!!」
私は、真っ青になって、聖を引きずって部屋の外に出た。
「なっ、なっ、なっ……何てコト言うのよ!」
「えー、だって、ホントのコトじゃない。三ノ宮くんには、ちゃんと、大事にしてもらわなきゃ」
「そういうんじゃないの!!!」
「――勝手に話を捏造するんじゃねぇ」
会話に入ってきた江陽は、玄関のドアを開け、少しだけ、前かがみでしかめ面をしている。
「――じゃあ、何で、前かがみになってるの?」
純粋な疑問に、私は、答えに詰まってしまう。
「コ、コレは深い事情が……」
「関係無ぇだろうが!」
「関係あるわよ!羽津紀は、アタシの大事な大事な友達なんだからー!」
その言葉に感動しながらも、はた、と、気づく。
――ここ、外じゃない!さっきの女性達が戻って来てしまう!
私は、聖を玄関の中に押し込み、代わりに江陽を引きずり出す。
「おい、うーちゃん!」
「だから、その呼び方するな!いつまで、子供の頃を引きずってるのよ!」
すると、ヤツは、う、と、固まった。
――そして。
「――……じゃあ……羽津紀――」
瞬間、心臓が跳ね上がる。
いくら江陽とはいえ、男に名前を呼び捨てにされるのは、この歳になると意識してしまうじゃない。
自分が呼び捨てにしている事を棚に上げ、私は、江陽をにらみつける。
「何で、名前呼びよ」
「今さら、名木沢サン、は、違和感あるんだよ」
「会社じゃ呼んでるじゃない」
「仕事は仕事だろ」
一瞬、正論に怯んでしまう。
けれど、それはそれ、だ。
「とにかく、もう、部屋に戻りなさい!アンタを部屋に入れる筋合いなんて無い!」
私は、そう言って、江陽を締め出し、ドアを閉める。
そして、オロオロしている聖を振り返ると、目を丸くされる。
「……聖?」
「……羽津紀……顔、真っ赤だよ……?」
「気っ……気のせいよっ……‼」
私は、顔を逸らしながら、中に入る。
――まるで、江陽を意識しているようで――単純な自分に、心底、嫌気が差した。