大嫌い同士の大恋愛
聖が部屋に戻った後、私は、淡々とルーティンをこなす。
毎日の生活を乱されるのは嫌なんだ。
それは――江陽に突き飛ばされ、腕の骨を折った時に、痛感した。
運悪く、右腕のヒジ辺りの骨を折った私は、そのまま整形外科に直行。
そして、がっちりとギプスを付けられ、約一か月。
ご飯を食べるのも、着替えるのも、お風呂に入るのも――もちろん、トイレだって、不便極まりなく。
ようやく解放される頃には、江陽に対する恨み言が蓄積していったものだ。
――……うーちゃん、なおった?
ようやく登園できると、ヤツは、恐る恐る私の機嫌をうかがうように尋ねてきた。
私は、ジロリ、と、見やり、ただ、うなづいて返す。
すると――。
――よかった!じゃあ、また、いっしょにあそぼう。
一瞬で笑顔になった江陽を見た瞬間、私の中で、怒りが沸き起こる。
――ヤダ。
そう、冷たく言い放つと、そのまま年長の部屋に一人で歩いて行く。
江陽は、驚いた顔を見せると、すぐに追いかけてきた。
――なんでだよ!うーちゃんは、オレといっしょにあそぶって、やくそくしたじゃん!
私は、ヤツの都合の良い頭の中を呪いながら、完全に無視を決め込む。
すると、部屋で遊んでいた男連中が、私に言ったのだ。
――うづき、コケておもちゃにぶつかったんだって?マヌケー!
――よえぇなー!
アハハ、と、残酷なまでの他人事感。
私は、イラつきながら、自分のロッカーに、着替え袋を突っ込む。
そして、ジロリとそいつらをにらみ言い返した。
――こうちゃんが、つきとばしたせいだもん。
すると、そいつらは、鼻で笑う。
――でも、ころんだのは、おまえがマヌケだからじゃん。
私が反論しようとすると、気配を感じ取ったのか、副担任の先生がタイミングよくやってきて、私とそいつらを引きはがした。
――羽津紀ちゃん、こうちゃんもわざとじゃないし、怒らないであげよう?
そう言った副担任も――男。
私は、完全に無視を決め込み、自分の席に座る。
――なんで、こうちゃんの、みかたするの。
男連中は――女が弱いから悪い、そう言うのだ。
そして、遠巻きに見ていた女の子達は、仲裁に入るでもなく、ただ、ひそひそとこちらを見ては、クスクスと笑っているだけ。
――ぜんぶ、こうちゃんのせいだ。
ワケのわからないわがままを許してしまった自分を後悔しながら、私は、元凶が部屋に入って来るのを見やると、避けるように席に着いた。
妹たちは、私がケガをするような真似は絶対にしないし、親もさせなかった。
それは――全員、女だからだったせいか。
――もう、男なんて、みんな敵だ。
私は、幼い心に、深く教訓のように刻み込んだのだった。
毎日の生活を乱されるのは嫌なんだ。
それは――江陽に突き飛ばされ、腕の骨を折った時に、痛感した。
運悪く、右腕のヒジ辺りの骨を折った私は、そのまま整形外科に直行。
そして、がっちりとギプスを付けられ、約一か月。
ご飯を食べるのも、着替えるのも、お風呂に入るのも――もちろん、トイレだって、不便極まりなく。
ようやく解放される頃には、江陽に対する恨み言が蓄積していったものだ。
――……うーちゃん、なおった?
ようやく登園できると、ヤツは、恐る恐る私の機嫌をうかがうように尋ねてきた。
私は、ジロリ、と、見やり、ただ、うなづいて返す。
すると――。
――よかった!じゃあ、また、いっしょにあそぼう。
一瞬で笑顔になった江陽を見た瞬間、私の中で、怒りが沸き起こる。
――ヤダ。
そう、冷たく言い放つと、そのまま年長の部屋に一人で歩いて行く。
江陽は、驚いた顔を見せると、すぐに追いかけてきた。
――なんでだよ!うーちゃんは、オレといっしょにあそぶって、やくそくしたじゃん!
私は、ヤツの都合の良い頭の中を呪いながら、完全に無視を決め込む。
すると、部屋で遊んでいた男連中が、私に言ったのだ。
――うづき、コケておもちゃにぶつかったんだって?マヌケー!
――よえぇなー!
アハハ、と、残酷なまでの他人事感。
私は、イラつきながら、自分のロッカーに、着替え袋を突っ込む。
そして、ジロリとそいつらをにらみ言い返した。
――こうちゃんが、つきとばしたせいだもん。
すると、そいつらは、鼻で笑う。
――でも、ころんだのは、おまえがマヌケだからじゃん。
私が反論しようとすると、気配を感じ取ったのか、副担任の先生がタイミングよくやってきて、私とそいつらを引きはがした。
――羽津紀ちゃん、こうちゃんもわざとじゃないし、怒らないであげよう?
そう言った副担任も――男。
私は、完全に無視を決め込み、自分の席に座る。
――なんで、こうちゃんの、みかたするの。
男連中は――女が弱いから悪い、そう言うのだ。
そして、遠巻きに見ていた女の子達は、仲裁に入るでもなく、ただ、ひそひそとこちらを見ては、クスクスと笑っているだけ。
――ぜんぶ、こうちゃんのせいだ。
ワケのわからないわがままを許してしまった自分を後悔しながら、私は、元凶が部屋に入って来るのを見やると、避けるように席に着いた。
妹たちは、私がケガをするような真似は絶対にしないし、親もさせなかった。
それは――全員、女だからだったせいか。
――もう、男なんて、みんな敵だ。
私は、幼い心に、深く教訓のように刻み込んだのだった。