大嫌い同士の大恋愛
1.最悪の再会
「だからさ、羽津紀(うづき)も、いい加減オトコ作ろうよー!で、ダブルデートしようよー!」

 土曜の夜の居酒屋。
 目の前には、入社時からの友人、久保(くぼ)(ひじり)が、カクテル三杯目にして、くだを巻き始めた。
 私は、いつものコト、と、流しながら、手元のハイボール三杯目を口にする。
 お互いに酒の強さは似たり寄ったり。
 けれど、聖は、私よりも場の雰囲気や、その日の気分で酔うペースが変わる。
 そして、今日は、少々早目で――。
 目の前の焼き鳥皮串を一気に頬張りながら、私は、あきれた。

「それより、アンタ、合コンはどうしたのよ、合コンは」

 そもそも、今日は、気合入れて合コンだ、と、月曜日から張り切っていたのに。
 聖は、私を見やると、はああ、と、ため息をつく。

「それがさー、お流れになっちゃってー!」

 そして、そう言いながら、テーブルの隙間に器用に突っ伏した。

「せっかくの一流企業の営業と合コンだって、気合入れてたのにー!」

「それは、残念ね。まあ、来週も入ってたんじゃないの?」

 聖にとって、合コンは、呼吸と一緒だ。
 昔から、男が途切れた事の無い彼女には、独り身は堪えがたい苦痛だという。
 そんな彼女の最後の彼氏とは、去年のクリスマス、相手の浮気が原因で別れたらしい。
 最近は、いよいよ限界が近づいているのか、彼氏欲しい、が、毎日呪文のように繰り返されている。

「ホラ、そろそろ自力で帰れなくなるわよ。もう、行きましょ」

「はぁーい……」

 同い年のはずなのに、妹のような甘え方をする聖を、あきれながらも放っておけない。
 長女気質とは、困ったものだ。

 どうにか立ち上がった彼女を支え、会計をしていると、不意に入り口を出た風防室で、きゃあきゃあと、甲高い声が聞こえた。
 私と聖が視線を向けると、そこには、ナンパなのか、逆ナンなのかは知らないが、男女四人が固まっている。

 ――まあ、避けるスペースはあるようだから、早いトコ帰ろう。

 そう思い、財布をバッグにしまい――ギョッとした。
< 2 / 143 >

この作品をシェア

pagetop