大嫌い同士の大恋愛
お昼時、いつもなら私のところに突撃してくる聖は、席に着いて班長から教えを乞うていた江陽のところへ向かって行った。
それは、付き合っていると公言した以上、仕方のないコト。
わかってはいるけれど――ほんの少しだけ、さみしさがよぎる。
「名木沢さん、一緒にお昼、食べませんか」
「え」
そんな二人を横目で見やり、お弁当を取り出そうとすると、頭上から声がかかった。
私が顔を上げると、片桐さんが、自分の弁当箱を抱えて見下ろしている。
「……いえ、私は――」
「アイデア表で、気にかかったところあるんじゃないですか?」
その言葉に、思わず彼を凝視してしまう。
――さすが、最年少班長。
ニッコリと微笑まれ、苦笑いで返す。
「……まあ、多少は――」
「じゃあ、お昼がてら、プレゼンさせてください」
「……わかりました」
仕事を盾にされたら、断れるものか。
私は立ち上がり、彼の後をついていく。
どの道、お昼の場所は、一緒なのだ。
「おい、羽津紀」
すると、ぶっきらぼうな口調で呼ばれ、反射でにらむようにそちらを見やる。
「……何でしょうか、三ノ宮さん」
「――……っ……」
「江陽クンー、お邪魔しちゃダメでしょ」
聖は、ヤツの顔をのぞき込み、私から視線を逸らさせようとするが、動く気配も無い。
その真っ直ぐな視線が居心地悪くなり、そのまま顔を背けた。
「名木沢さん?」
「あ、すみません。今――」
私は、江陽と聖の二人から逃げるように、片桐さんの後を追った。
「良いの、彼等?」
「え」
休憩室の空いている二人がけに向かい合って座ると、片桐さんは、申し訳なさそうに私を見た。
「何がでしょうか」
私は、持っていたお弁当を開きながら、彼に尋ねた。
――何となく、視線を向けるのはためらわれて。
「いや、仲良いからさ。――久保さんとは、毎日一緒でしょ」
お昼休みのせいか、片桐さんは、砕けた口調に変わる。
「ですが、今は、お邪魔でしょうし」
「そっか。付き合ってるって聞いたけど、本当なんだ?」
「みたいですが」
あくまで、他人事のように返す。
片桐さんは、何かを勘づいたようだが、口元を上げて、そう、とだけ返してくれた。
――こういうところは、年上なのだと、実感させられる。
江陽なら、食い下がって、ギャアギャア言い出しそうな場面なのに。
そう思い、彼に視線を向けると、そのお弁当の中身に目を引かれた。
「わ」
「え?」
思わず出た言葉に反応され、少々気まずくなる。
「――えっと……綺麗な色どりですね」
彼のお弁当の中身は、まるで、料理の本の写真のように鮮やかで、とても美味しそうに見えたのだ。
「ああ、自分で適当に詰めただけだよ」
「え」
「仮にも、食品会社の企画班。自分で作らないと、発見も無いからね」
「――そう、ですね」
という事は、自炊も普通にしているんだろう。
私は、彼の意識の高さに、感心した。
「まあ、名木沢さんには負けるよ」
「勝敗では無いでしょう。意識の問題です」
そう、淡々と返すと、ふ、と、笑われる。
思わず視線を向ければ、優しく微笑まれた。
それは、付き合っていると公言した以上、仕方のないコト。
わかってはいるけれど――ほんの少しだけ、さみしさがよぎる。
「名木沢さん、一緒にお昼、食べませんか」
「え」
そんな二人を横目で見やり、お弁当を取り出そうとすると、頭上から声がかかった。
私が顔を上げると、片桐さんが、自分の弁当箱を抱えて見下ろしている。
「……いえ、私は――」
「アイデア表で、気にかかったところあるんじゃないですか?」
その言葉に、思わず彼を凝視してしまう。
――さすが、最年少班長。
ニッコリと微笑まれ、苦笑いで返す。
「……まあ、多少は――」
「じゃあ、お昼がてら、プレゼンさせてください」
「……わかりました」
仕事を盾にされたら、断れるものか。
私は立ち上がり、彼の後をついていく。
どの道、お昼の場所は、一緒なのだ。
「おい、羽津紀」
すると、ぶっきらぼうな口調で呼ばれ、反射でにらむようにそちらを見やる。
「……何でしょうか、三ノ宮さん」
「――……っ……」
「江陽クンー、お邪魔しちゃダメでしょ」
聖は、ヤツの顔をのぞき込み、私から視線を逸らさせようとするが、動く気配も無い。
その真っ直ぐな視線が居心地悪くなり、そのまま顔を背けた。
「名木沢さん?」
「あ、すみません。今――」
私は、江陽と聖の二人から逃げるように、片桐さんの後を追った。
「良いの、彼等?」
「え」
休憩室の空いている二人がけに向かい合って座ると、片桐さんは、申し訳なさそうに私を見た。
「何がでしょうか」
私は、持っていたお弁当を開きながら、彼に尋ねた。
――何となく、視線を向けるのはためらわれて。
「いや、仲良いからさ。――久保さんとは、毎日一緒でしょ」
お昼休みのせいか、片桐さんは、砕けた口調に変わる。
「ですが、今は、お邪魔でしょうし」
「そっか。付き合ってるって聞いたけど、本当なんだ?」
「みたいですが」
あくまで、他人事のように返す。
片桐さんは、何かを勘づいたようだが、口元を上げて、そう、とだけ返してくれた。
――こういうところは、年上なのだと、実感させられる。
江陽なら、食い下がって、ギャアギャア言い出しそうな場面なのに。
そう思い、彼に視線を向けると、そのお弁当の中身に目を引かれた。
「わ」
「え?」
思わず出た言葉に反応され、少々気まずくなる。
「――えっと……綺麗な色どりですね」
彼のお弁当の中身は、まるで、料理の本の写真のように鮮やかで、とても美味しそうに見えたのだ。
「ああ、自分で適当に詰めただけだよ」
「え」
「仮にも、食品会社の企画班。自分で作らないと、発見も無いからね」
「――そう、ですね」
という事は、自炊も普通にしているんだろう。
私は、彼の意識の高さに、感心した。
「まあ、名木沢さんには負けるよ」
「勝敗では無いでしょう。意識の問題です」
そう、淡々と返すと、ふ、と、笑われる。
思わず視線を向ければ、優しく微笑まれた。