大嫌い同士の大恋愛
7.人生初の・・・
試作品を作っている工場は、本社から、バスで十五分ほどの、海沿いにある。
広い敷地の前に専用のバス停があり、そこで下りると、私達は目の前の門へと歩き出した。
「片桐くん、試作品だと、第四工場かい?」
機嫌良く歩きながら、社長は片桐さんを見やり、尋ねた。
「ハ、ハイ。……一応、アポは取ってありますので、直接行きますが……」
そこで彼は言葉を濁す。
――社長が来るとまでは、伝えていないのだ。
否、伝える時間が無かった。
私が、隙を見て連絡しようと思ったが、何せ、サプライズ好きな社長だ。
先回りすれば、また、拗ねるのは目に見えている。
面倒くさいコトになるのは、ごめんだったので、あきらめた。
社長を先頭に、片桐さん、私、江陽、聖、の順で工場に入っていく。
すると、迎えに出てきた第四工場長が一気にパニックになってしまった。
「し、社長⁉な、何で、いや、えっと、試作品、ですかっ⁉まだ、全然……」
「ああ、気にしないでくれ。ただの工場見学だからね」
明るく言う社長と、真っ青になる工場長。
その対比に、私達は、眉を下げる。
――すみません、工場長。
全員、心の中で合掌。
機嫌が良いのは、社長のみ。
――けれど、これが、昇龍食品のいつもの風景なのだ……。
結局、ビクつきながら案内してくれた工場長についていき、私達は、試作品を作っている部屋へ向かった。
企画課で通った商品を試作して、改良を重ねていくのが、第四工場にある試作室だ。
そこに入ると、白衣を着た人達が数人、それぞれの機器を扱いながらイメージに沿った香辛料を調合していたり、試作品をチェックしていたり――パッと見は、どこかの研究室のよう。
「……何か、薬品会社みてぇ」
「……うるさい、江陽」
そうは言いながらも、まるで社会科見学のように、キョロキョロとあちこちを興味深く見回している江陽は、完全に小学生男子だ。
そして、サンプルが並んでいる棚を見やると、私の背中を突いた。
「な、な、羽津紀、アレってウチがこの前出したヤツだろ。オレ、関西支社にいた時、販売数トップだったんだぜ」
そう、浮かれたように自慢してくるヤツを、ジロリを見上げる。
「……江陽……アンタ、一体、何のために来たのか、わかってる⁉」
「……お、おう……」
一瞬怯んだ江陽は、けれど、何だか、穏やかな――どこか、うれしそうな表情になり、私を見下ろす。
それが、何故か、居心地悪く感じ、思わず視線を逸らした。
「……何」
「いや、昔、社会科見学行った時も、そんなだったよな、お前。クラス全員、遊び半分だったのに、一人だけクソ真面目にノート取ってよ」
「授業だったんだから、当たり前でしょう」
「――変わらねぇな、そういうトコ」
うるさい、と、続けようとしたが、今、この状況自体、マズいではないか。
せっかく、時間を割いてくれた皆さんに申し訳ない。
私は、口を閉じると、先にいろいろ説明を受けていた片桐さんの元に向かった。
広い敷地の前に専用のバス停があり、そこで下りると、私達は目の前の門へと歩き出した。
「片桐くん、試作品だと、第四工場かい?」
機嫌良く歩きながら、社長は片桐さんを見やり、尋ねた。
「ハ、ハイ。……一応、アポは取ってありますので、直接行きますが……」
そこで彼は言葉を濁す。
――社長が来るとまでは、伝えていないのだ。
否、伝える時間が無かった。
私が、隙を見て連絡しようと思ったが、何せ、サプライズ好きな社長だ。
先回りすれば、また、拗ねるのは目に見えている。
面倒くさいコトになるのは、ごめんだったので、あきらめた。
社長を先頭に、片桐さん、私、江陽、聖、の順で工場に入っていく。
すると、迎えに出てきた第四工場長が一気にパニックになってしまった。
「し、社長⁉な、何で、いや、えっと、試作品、ですかっ⁉まだ、全然……」
「ああ、気にしないでくれ。ただの工場見学だからね」
明るく言う社長と、真っ青になる工場長。
その対比に、私達は、眉を下げる。
――すみません、工場長。
全員、心の中で合掌。
機嫌が良いのは、社長のみ。
――けれど、これが、昇龍食品のいつもの風景なのだ……。
結局、ビクつきながら案内してくれた工場長についていき、私達は、試作品を作っている部屋へ向かった。
企画課で通った商品を試作して、改良を重ねていくのが、第四工場にある試作室だ。
そこに入ると、白衣を着た人達が数人、それぞれの機器を扱いながらイメージに沿った香辛料を調合していたり、試作品をチェックしていたり――パッと見は、どこかの研究室のよう。
「……何か、薬品会社みてぇ」
「……うるさい、江陽」
そうは言いながらも、まるで社会科見学のように、キョロキョロとあちこちを興味深く見回している江陽は、完全に小学生男子だ。
そして、サンプルが並んでいる棚を見やると、私の背中を突いた。
「な、な、羽津紀、アレってウチがこの前出したヤツだろ。オレ、関西支社にいた時、販売数トップだったんだぜ」
そう、浮かれたように自慢してくるヤツを、ジロリを見上げる。
「……江陽……アンタ、一体、何のために来たのか、わかってる⁉」
「……お、おう……」
一瞬怯んだ江陽は、けれど、何だか、穏やかな――どこか、うれしそうな表情になり、私を見下ろす。
それが、何故か、居心地悪く感じ、思わず視線を逸らした。
「……何」
「いや、昔、社会科見学行った時も、そんなだったよな、お前。クラス全員、遊び半分だったのに、一人だけクソ真面目にノート取ってよ」
「授業だったんだから、当たり前でしょう」
「――変わらねぇな、そういうトコ」
うるさい、と、続けようとしたが、今、この状況自体、マズいではないか。
せっかく、時間を割いてくれた皆さんに申し訳ない。
私は、口を閉じると、先にいろいろ説明を受けていた片桐さんの元に向かった。