大嫌い同士の大恋愛
サンプル室は、最近開発した商品の大半が残っていて、両側にジャンルごとに分けられたケースがメタルラックに積まれている。
私と片桐さんは、その中から、密閉容器を使った商品を探し出そうと、奥の方からチェックを始めた。
「――名木沢さん、二年前の、香辛料系のリニューアルのケースの方から探してもらえますか」
「わかりました」
うなづいて、少し上にあるケースに手を伸ばす。
――あ。
油断していた訳ではないはず。
けれど、持ったはずのケースは、手から滑り落ち――私は、思わず、目をつむり、身体を縮こませた。
――……あれ?
覚悟していた衝撃が、いつまで経っても来ない。
その代わりに――抱き込まれるような感触。
恐る恐る目を開くと、片桐さんが、左手で落ちかけたケースを支え、右手で私を抱きかかえていた。
「――……危なかったね」
「……す、すみません!」
慌てて離れようとするが、ケースをちゃんと戻さないといけない。
片桐さんが、片手で元の位置に戻すのを見やり、私は、ようやく動こうとする。
――なのに。
「か、片桐さん……?」
彼は、そのまま私を、自分の胸へと抱き寄せる。
「……名木沢さん、危機感、無さすぎ」
「あ、す、すみません。手を伸ばせば、イケるかと思って……」
私は、謝りながらどうにか顔を上げると――今までとは打って変わって、真剣な表情の彼がいた。
――……あれ……?
その空気に、心臓が激しく動き出す。
「か、片桐さん……?」
徐々に近づいてきた彼は、良く見れば、整った顔立ち。
――聖がチェック済み、というだけあるな。
そんな現実逃避が始まってしまう。
頬がゆっくりと撫でられ、身体がビクリと跳ね上がる。
けれど、抱き締められたまま、それは押さえつけられた。
「あ、あの、離して……」
「――長期戦覚悟してたけど……自覚される前に、防いだ方が良いのかな」
「え?」
そう言いながら、彼の顔が、至近距離まで近づいた。
――そして。
その、少しだけかさついた唇が、重なる。
――……え??
――……え???
え、しか、頭の中を回らない。
軽くキスを落とした彼は、一旦離れると、今度は――私の頭を押さえ、今度は、しっかりと唇を重ねた。
何度も、角度を変え、浅く、深く。
――……え、何コレ。
徐々に、フワフワとした感覚に包まれ、身体から力が抜けていく。
それに気がついた片桐さんは、私を支えるように抱きかかえると、一旦、唇を離す。
「――……ふっ……ぁ……」
停止した脳内は、本能を制止できない。
――キスが、気持ち良いなんて、思ってもみなかった。
動揺している私を見つめ、片桐さんが、更に唇を寄せる――その瞬間。
「おい、羽津紀、まだ――……」
ドアが勢いよく開かれ――入り口には、完全に停止した、江陽が立っていた。
私と片桐さんは、その中から、密閉容器を使った商品を探し出そうと、奥の方からチェックを始めた。
「――名木沢さん、二年前の、香辛料系のリニューアルのケースの方から探してもらえますか」
「わかりました」
うなづいて、少し上にあるケースに手を伸ばす。
――あ。
油断していた訳ではないはず。
けれど、持ったはずのケースは、手から滑り落ち――私は、思わず、目をつむり、身体を縮こませた。
――……あれ?
覚悟していた衝撃が、いつまで経っても来ない。
その代わりに――抱き込まれるような感触。
恐る恐る目を開くと、片桐さんが、左手で落ちかけたケースを支え、右手で私を抱きかかえていた。
「――……危なかったね」
「……す、すみません!」
慌てて離れようとするが、ケースをちゃんと戻さないといけない。
片桐さんが、片手で元の位置に戻すのを見やり、私は、ようやく動こうとする。
――なのに。
「か、片桐さん……?」
彼は、そのまま私を、自分の胸へと抱き寄せる。
「……名木沢さん、危機感、無さすぎ」
「あ、す、すみません。手を伸ばせば、イケるかと思って……」
私は、謝りながらどうにか顔を上げると――今までとは打って変わって、真剣な表情の彼がいた。
――……あれ……?
その空気に、心臓が激しく動き出す。
「か、片桐さん……?」
徐々に近づいてきた彼は、良く見れば、整った顔立ち。
――聖がチェック済み、というだけあるな。
そんな現実逃避が始まってしまう。
頬がゆっくりと撫でられ、身体がビクリと跳ね上がる。
けれど、抱き締められたまま、それは押さえつけられた。
「あ、あの、離して……」
「――長期戦覚悟してたけど……自覚される前に、防いだ方が良いのかな」
「え?」
そう言いながら、彼の顔が、至近距離まで近づいた。
――そして。
その、少しだけかさついた唇が、重なる。
――……え??
――……え???
え、しか、頭の中を回らない。
軽くキスを落とした彼は、一旦離れると、今度は――私の頭を押さえ、今度は、しっかりと唇を重ねた。
何度も、角度を変え、浅く、深く。
――……え、何コレ。
徐々に、フワフワとした感覚に包まれ、身体から力が抜けていく。
それに気がついた片桐さんは、私を支えるように抱きかかえると、一旦、唇を離す。
「――……ふっ……ぁ……」
停止した脳内は、本能を制止できない。
――キスが、気持ち良いなんて、思ってもみなかった。
動揺している私を見つめ、片桐さんが、更に唇を寄せる――その瞬間。
「おい、羽津紀、まだ――……」
ドアが勢いよく開かれ――入り口には、完全に停止した、江陽が立っていた。