大嫌い同士の大恋愛
到着したのは、会社からそう遠くないイタリアンレストラン。
ランチで使う社員も多い、馴染みのあるところ。
――まあ、私には縁の無いところだけれど。
キョロキョロと店内を見回していると、片桐さんが、いつの間にやら店員さんの後を歩き始めたので、慌てて着いて行く。
「――では、こちらのタブレットでご注文ください」
そう言って、店員さんはタブレットを置くと、お冷を二つ、並べて行った。
私は、目を丸くして、それを見つめる。
「どうかしたの、名木沢さん?」
「え、いえ、こういうの、見た事無かったので……」
言ってから、気まずくなる。
バカにされるかしら。
けれど、片桐さんは、そう、と、微笑んでタブレットを持った。
「ワインとかは?」
「――いえ、明日も仕事ですので」
「そっか。じゃあ、何にしようかな」
私にも見えるように傾けながら、彼は、メニューを眺める。
そして、数分悩み、二人ともパスタのセットを注文した。
片桐さんは、役目を終えたタブレットをテーブルの脇に寄せると、肘をつき、私をのぞき込んでくる。
「今日は、朝からお疲れだったね」
その言葉に、何か含まれているようで、思わず眉を寄せた。
「……完全に、寝坊しましたので」
「そっか。――原因は僕?」
「……複数の要因が絡まっております」
若干ふてくされたように言うと、彼は体勢を直し、コップを持つ。
「――僕だけなら、うれしかったんだけど」
「申し訳ありませんが、あの状況でそれは無理かと」
「確かに」
クスリ、と、笑い、彼はお冷を口にした。
私は手持ち無沙汰になり、間を持たせるように、コップを手に取る。
「――でもさ、三ノ宮くんは、どうして追いかけてきたのかな」
「私には、わかりかねますが」
そもそも、聖と一緒に帰ったのではなかったのか。
「――あの男の考える事なんて、わかりたくありません」
そう続けると、片桐さんは、噴き出す。
「……片桐さん?」
「い、いや、相当な嫌われようだな、って」
「――……理由はお伝えしたかと」
「うん。――だから、今は、僕にアドバンテージがあるね」
私は、意味が把握できず、眉を寄せる。
けれど、そのタイミングで料理が運ばれて来て、条件反射で目が輝いてしまった。
「先に食べようか」
「ハ、ハイ」
少々バツが悪くなった私は、ごまかすようにフォークを手にする。
目の前には、いつもなら頼まないような、季節限定の生パスタ。
乗っていたアスパラが、とても美味しそうに見えたのが決定打だ。
片桐さんは、シンプルなボロネーゼ。
「「いただきます」」
図ったようなタイミングでハモってしまい、二人で見合い、苦笑い。
こんな風にできる彼は――きっと、理想の恋人というヤツなのかもしれない。
ふと、そんな風に思ったけれど、そんな思いは、一瞬で吹っ飛んだ。
「あれー、羽津紀、ココだったのー?」
会社で別れたはずの聖が、そう言って、目を丸くした。
「……聖」
そして、その隣には――
「……江陽……」
お似合いの二人は、店内の視線を独り占めしながら、私達の隣の席に座ったのだった。
ランチで使う社員も多い、馴染みのあるところ。
――まあ、私には縁の無いところだけれど。
キョロキョロと店内を見回していると、片桐さんが、いつの間にやら店員さんの後を歩き始めたので、慌てて着いて行く。
「――では、こちらのタブレットでご注文ください」
そう言って、店員さんはタブレットを置くと、お冷を二つ、並べて行った。
私は、目を丸くして、それを見つめる。
「どうかしたの、名木沢さん?」
「え、いえ、こういうの、見た事無かったので……」
言ってから、気まずくなる。
バカにされるかしら。
けれど、片桐さんは、そう、と、微笑んでタブレットを持った。
「ワインとかは?」
「――いえ、明日も仕事ですので」
「そっか。じゃあ、何にしようかな」
私にも見えるように傾けながら、彼は、メニューを眺める。
そして、数分悩み、二人ともパスタのセットを注文した。
片桐さんは、役目を終えたタブレットをテーブルの脇に寄せると、肘をつき、私をのぞき込んでくる。
「今日は、朝からお疲れだったね」
その言葉に、何か含まれているようで、思わず眉を寄せた。
「……完全に、寝坊しましたので」
「そっか。――原因は僕?」
「……複数の要因が絡まっております」
若干ふてくされたように言うと、彼は体勢を直し、コップを持つ。
「――僕だけなら、うれしかったんだけど」
「申し訳ありませんが、あの状況でそれは無理かと」
「確かに」
クスリ、と、笑い、彼はお冷を口にした。
私は手持ち無沙汰になり、間を持たせるように、コップを手に取る。
「――でもさ、三ノ宮くんは、どうして追いかけてきたのかな」
「私には、わかりかねますが」
そもそも、聖と一緒に帰ったのではなかったのか。
「――あの男の考える事なんて、わかりたくありません」
そう続けると、片桐さんは、噴き出す。
「……片桐さん?」
「い、いや、相当な嫌われようだな、って」
「――……理由はお伝えしたかと」
「うん。――だから、今は、僕にアドバンテージがあるね」
私は、意味が把握できず、眉を寄せる。
けれど、そのタイミングで料理が運ばれて来て、条件反射で目が輝いてしまった。
「先に食べようか」
「ハ、ハイ」
少々バツが悪くなった私は、ごまかすようにフォークを手にする。
目の前には、いつもなら頼まないような、季節限定の生パスタ。
乗っていたアスパラが、とても美味しそうに見えたのが決定打だ。
片桐さんは、シンプルなボロネーゼ。
「「いただきます」」
図ったようなタイミングでハモってしまい、二人で見合い、苦笑い。
こんな風にできる彼は――きっと、理想の恋人というヤツなのかもしれない。
ふと、そんな風に思ったけれど、そんな思いは、一瞬で吹っ飛んだ。
「あれー、羽津紀、ココだったのー?」
会社で別れたはずの聖が、そう言って、目を丸くした。
「……聖」
そして、その隣には――
「……江陽……」
お似合いの二人は、店内の視線を独り占めしながら、私達の隣の席に座ったのだった。