大嫌い同士の大恋愛
いよいよ見合い当日の日曜日。
私は、暗い気分のまま、実家の敷居をまたいだ。
「お帰り、羽津紀」
「……ただいま、お母さん」
「お帰りー、お姉ちゃん」
「お帰りなさい」
玄関のドアを開ければ、待ち構えていたように、母親が出てきて、更には妹二人まで。
「もう、タクシー呼んだから、このまま行くわよ」
そう言った母親は、珍しく、余所行き仕様のスーツだ。
「頑張ってねー、お姉ちゃん」
上の妹――皐津紀が、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、私に言う。
「――何も頑張る事は無いでしょうに」
「まあまあ。せっかくの一流ホテルなんだから、いろいろ見てきなってば」
「皐津紀ちゃん、羽津紀ちゃんだって、好きで行くんじゃないのに」
すると、下の妹――紫津紀が、眉を下げる。
自由奔放な次女と、大人しい三女。
妹二人は年子のせいか、双子のようにいつもセットでいる事が多い。
皐津紀はセレクトショップの店員、紫津紀は新卒で地元企業の事務員だ。
二人とも、私の男嫌いは承知している。
「……とにかく、速攻で断って来るから。帰ったら、お母さんの事、頼んだわよ」
「ええー……」
「まあ……頑張るけど……」
紫津紀が、困ったように私を見やる。
「……羽津紀ちゃん、本当に、断るの?」
「――決まってるでしょう。私は、男なんて嫌いなの」
「お母さん、残念がるよ……?」
「それは、あきらめてちょうだい。突然、見合い話を持ってこられた私の身にもなってよ」
「……まあ、それもそうだけどさ……」
煮え切らない態度の紫津紀に、私はにらみながら言う。
イラつきをぶつけてしまうのは、しょうがないと思って欲しい。
「ホラ、タクシー来たわよ、羽津紀!」
すると、場の空気も読まず、母親がテンション高く呼んできた。
私は、大きく息を吐くと、渋々――本当に、渋々ながら、家の前に停まったタクシーに乗り込んだのだった。
私は、暗い気分のまま、実家の敷居をまたいだ。
「お帰り、羽津紀」
「……ただいま、お母さん」
「お帰りー、お姉ちゃん」
「お帰りなさい」
玄関のドアを開ければ、待ち構えていたように、母親が出てきて、更には妹二人まで。
「もう、タクシー呼んだから、このまま行くわよ」
そう言った母親は、珍しく、余所行き仕様のスーツだ。
「頑張ってねー、お姉ちゃん」
上の妹――皐津紀が、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、私に言う。
「――何も頑張る事は無いでしょうに」
「まあまあ。せっかくの一流ホテルなんだから、いろいろ見てきなってば」
「皐津紀ちゃん、羽津紀ちゃんだって、好きで行くんじゃないのに」
すると、下の妹――紫津紀が、眉を下げる。
自由奔放な次女と、大人しい三女。
妹二人は年子のせいか、双子のようにいつもセットでいる事が多い。
皐津紀はセレクトショップの店員、紫津紀は新卒で地元企業の事務員だ。
二人とも、私の男嫌いは承知している。
「……とにかく、速攻で断って来るから。帰ったら、お母さんの事、頼んだわよ」
「ええー……」
「まあ……頑張るけど……」
紫津紀が、困ったように私を見やる。
「……羽津紀ちゃん、本当に、断るの?」
「――決まってるでしょう。私は、男なんて嫌いなの」
「お母さん、残念がるよ……?」
「それは、あきらめてちょうだい。突然、見合い話を持ってこられた私の身にもなってよ」
「……まあ、それもそうだけどさ……」
煮え切らない態度の紫津紀に、私はにらみながら言う。
イラつきをぶつけてしまうのは、しょうがないと思って欲しい。
「ホラ、タクシー来たわよ、羽津紀!」
すると、場の空気も読まず、母親がテンション高く呼んできた。
私は、大きく息を吐くと、渋々――本当に、渋々ながら、家の前に停まったタクシーに乗り込んだのだった。