大嫌い同士の大恋愛
 至近距離に、無駄に端正な江陽の顔。

 ――え??

「――オレも男だからな。……女嫌いだろうと、やろうと思えばできるんだよ」

 そう言いながら、徐々に近づいてくるヤツを、私は慌てて手で遮る。
「ち、ちょっと待ってよ……!アンタには、聖がいるでしょうが!」
「何で、今、聖が出てくるんだよ」
「当然じゃない!彼女でしょう!」
「偽装だろ」

「でも、聖は「いい加減、黙れ」

 江陽は、そう言って、問答無用とばかりに――私に口づけた。

 目を見開いた私は、けれど、そのまま硬直。


 ――ああ、マズい。

 ――頭が、真っ白になる。


 片桐さんとは違う、かさついた唇の感触。
 そして、少しだけぎこちなく、けれど、離れようとしない。

 ――……どうしよう。

 ――……逃げられない……。


「ふ、ぁ……」

 呼吸が苦しくなったのか、一瞬だけ江陽の唇が離れると、甘い声が耳に届く。
 それが――自分のモノだと気づいたと同時に、ヤツは更に深く口づけてきた。
「んっ……!」
 熱く、生温かい何かが、口内に入ってくる。
 それが、絡められた江陽の舌だと気づき、全身が、かあっと熱くなった。

 ――ウソ。

 ――……だめ、これ以上――……。

 けれど、ヤツは、そのまま私をソファに倒し、真上から覆いかぶさる。
「――……んっ、や、は、っ……」
「羽津紀」
 そして、ようやく離された唇は、首元から、はだけた胸元に向かう。
 そのすべてに、全身がしびれていき、力が抜けそうになってしまう。

「――ぁっ……」

 江陽は、ブラの中に手を入れ、瞬間、跳ね上がった私の身体を押さえつけると、更に口づけを続ける。
 その手は、当然のように、やわやわと私の胸を揉んでいく。

「んぅっ……!」

 ――……本当に、このまま、しちゃう(・・・・)気……?!

 私が動揺したのに気がついたのか、ほんの少しだけ唇が離された。

「こ、ちゃ、ん……ダ、メ……」

 かすれた声で江陽を呼ぶと、眉を寄せて返される。
「――いつまで、昔のままなんだよ」
「で、も――」
「でも、じゃねえよ。感じてんだろ」
「バッ……!!!」
 慌てる私の着物の裾から、手を入れた江陽は、太ももから、すう、と、肌を撫で始める。

「きゃあっ……‼」

 その感触に驚き、一気に頭がクリアになった。
 そして、次に浮かんだのは――聖の笑顔。

 江陽の手が、際どいところまで届く、その時――。


「いっ……いい加減にしなさいっ……江陽っ……!!!」


 そう反射で叫んだ私のヒザは、勢いよく、ヤツの股間に激突した。
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