大嫌い同士の大恋愛
すると、部屋のインターフォンが鳴り響き、画面を見やれば、のぞき込むのは聖だ。
「お待たせー」
ニッコリと、思う存分綺麗な笑みを私に見せてくれ、過去を思い出し、荒んだ心は和んだ。
「まったく……時間かかり過ぎよ」
「ゴメンー。せっかくだしー」
「何がせっかくなのよ」
「まあ、良いでしょー。行こう、行こう!夕方から居酒屋とか、贅沢ー」
「憂さ晴らしよ」
二人で笑い合いながら、マンションを出る。
そして、歩いて十分程、先日、江陽と会った居酒屋に入った。
いらっしゃいませー、と、元気な声に迎えられる。
この店は、不定期だが、聖と通い続けて二年半ほど。
顔なじみになった店員がやって来て、奥の席に案内してくれると、今日は、と、わかったように注文を取り始めた。
いつものポテトフライとから揚げ、シーザーサラダ、後は、日替わりのお勧め。
今日は、ローストビーフのカルパッチョだった。
それらと、ハイボール、聖はレモンハイを頼み、二人でお冷を口にした。
「ねえ、羽津紀ー。お見合い相手、好みじゃなかったの?」
すると、当然のように話題にされ、顔を思い切りしかめて返す。
「ど、どうしたのー?そんなに変な相手だった?」
「……こ……江陽だった……」
「――え?」
あきらめて、最初から事情を話す。
――ただ、アイツが、サングループの社長の息子という事は伏せて。
聖は、途中やってきたカルパッチョを取り皿に分けると、一口。
その間に、お互いのアルコールがやってきた。
私は突き出しの山菜の和え物を口にし、半分あおるように飲むと、続ける。
「……母親同士が、盛り上がって、どうしようもなかったのよ」
「……そっか」
「でも、断って良いって言ったのに、ちょっと様子見ろ、って――どういうコトよ!」
「羽津紀、抑えて、抑えて」
話しているうちに、だんだんと怒りが復活してきた。
私は、残ったハイボールを一気にあおって、追加注文。
「ホ、ホラ、サラダ来たから、食べよう?」
「……ありがと」
なだめるように、聖に皿に分けたサラダを手渡され、そのまま口にする。
「――美味しい。……黒コショウ、何かいつものやつじゃない?」
「ええー?」
私の言葉に、彼女も口にして、うなづく。
「そうだねー。……ちょっと、辛みが強い?」
「でも、このドレッシングにはちょうどいいかも」
話題がお見合いから逸れたが、そのまま揚げ物もやって来たので、勢いよく食べ進めた。
その間にも徐々に客足が増え始め、日曜だからか、仲間同士や、家族連れで店内は賑やかになってくる。
それを横目で見ながらグラスを空け、追加注文しようと厨房の方を見やり――私は停止した。
「あれー、江陽クンー!」
聖の声が、耳を通り過ぎていく。
隣に案内された江陽は、完全に固まって、私を凝視していた。
「お待たせー」
ニッコリと、思う存分綺麗な笑みを私に見せてくれ、過去を思い出し、荒んだ心は和んだ。
「まったく……時間かかり過ぎよ」
「ゴメンー。せっかくだしー」
「何がせっかくなのよ」
「まあ、良いでしょー。行こう、行こう!夕方から居酒屋とか、贅沢ー」
「憂さ晴らしよ」
二人で笑い合いながら、マンションを出る。
そして、歩いて十分程、先日、江陽と会った居酒屋に入った。
いらっしゃいませー、と、元気な声に迎えられる。
この店は、不定期だが、聖と通い続けて二年半ほど。
顔なじみになった店員がやって来て、奥の席に案内してくれると、今日は、と、わかったように注文を取り始めた。
いつものポテトフライとから揚げ、シーザーサラダ、後は、日替わりのお勧め。
今日は、ローストビーフのカルパッチョだった。
それらと、ハイボール、聖はレモンハイを頼み、二人でお冷を口にした。
「ねえ、羽津紀ー。お見合い相手、好みじゃなかったの?」
すると、当然のように話題にされ、顔を思い切りしかめて返す。
「ど、どうしたのー?そんなに変な相手だった?」
「……こ……江陽だった……」
「――え?」
あきらめて、最初から事情を話す。
――ただ、アイツが、サングループの社長の息子という事は伏せて。
聖は、途中やってきたカルパッチョを取り皿に分けると、一口。
その間に、お互いのアルコールがやってきた。
私は突き出しの山菜の和え物を口にし、半分あおるように飲むと、続ける。
「……母親同士が、盛り上がって、どうしようもなかったのよ」
「……そっか」
「でも、断って良いって言ったのに、ちょっと様子見ろ、って――どういうコトよ!」
「羽津紀、抑えて、抑えて」
話しているうちに、だんだんと怒りが復活してきた。
私は、残ったハイボールを一気にあおって、追加注文。
「ホ、ホラ、サラダ来たから、食べよう?」
「……ありがと」
なだめるように、聖に皿に分けたサラダを手渡され、そのまま口にする。
「――美味しい。……黒コショウ、何かいつものやつじゃない?」
「ええー?」
私の言葉に、彼女も口にして、うなづく。
「そうだねー。……ちょっと、辛みが強い?」
「でも、このドレッシングにはちょうどいいかも」
話題がお見合いから逸れたが、そのまま揚げ物もやって来たので、勢いよく食べ進めた。
その間にも徐々に客足が増え始め、日曜だからか、仲間同士や、家族連れで店内は賑やかになってくる。
それを横目で見ながらグラスを空け、追加注文しようと厨房の方を見やり――私は停止した。
「あれー、江陽クンー!」
聖の声が、耳を通り過ぎていく。
隣に案内された江陽は、完全に固まって、私を凝視していた。