大嫌い同士の大恋愛
 怠い身体を思い切り伸ばし、ベランダに通じる窓のカーテンを開ける。
 日差しは、四月の割にはキツく、紫外線が少々気になってしまうが、窓を開ければ、まだ、ヒンヤリとした風が入ってきた。
 三階の窓から見下ろす景色は、ところどころビルに遮られてはいるが、まあ、見通しは悪くなく、下を見下ろせば、引っ越し業者が段ボール箱を抱えて行き来していたところだった。

 ――そう言えば、隣の女性(ひと)、大阪行くって言ってたな……。

 先日、お世話になりました、と、顔だけ知っている女性が挨拶に来たのを思い出す。
 そんなに交流も無かったが、礼儀としては、受け取っておいた。

 今度は、どんな人が来るんだろうな。

 私は、部屋に戻り、窓とカーテンを閉めると、ベッドに横になる。
 聖と違い、彼氏どころか、男なんて見る影も無い。
 けれど――私は、それでいい。

 ――男なんて、一生、必要無い。

 決意を新たにしていると、不意に、インターフォンが鳴り響く。
 さっそく、挨拶に来たのだろう。律儀な人だな。
 画面も確認せずに、そんなコトを思いながら、ドアを開く。

「ハイ」

 すると――



「――……っ……お、まえっ……!」



「――……は??」


 目の前には――昨日の、失礼な男が立っていて目を見開いている。

 私は、引きつりながら、硬直し――

 頭の片隅で、何で、Tシャツとジャージ(こんなカッコ)か、と、打ちひしがれていたのだった。
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