大嫌い同士の大恋愛
「こう……三ノ宮くんが体調不良かは、知りませんが――普通、そんな人のところに、大した交流も無い人間が、押しかけるなんて迷惑でしかないと思いますが」
「は?何で、アンタにそんなコト言われないとなんです?」
私をにらみつける女性の腕を、もう一人が引くと、何かを耳うちする。
そして、わかったように笑われた。
「ああ、そっかぁ。久保聖の引き立て役だったねー」
「――それが何か」
そんな風に言われようが、事実なのだ。否定する気も、怒る気もしない。
平然と返すと、予想外だったのか、彼女たちは更に続ける。
「もう、三ノ宮クンはフリーなんだから、誰が行ったってかまわないでしょ」
「先日、彼は、あなた達から逃げていましたが?」
「はぁ⁉そんなの知らないけど?イケメン、彼氏にするチャンスなの。邪魔しないでよ」
――ああ、もう、こんな常識の無い人間と、同じ会社だなんて。
私はイラつきを抑えられず、吐き捨てるように言ってしまった。
「――その江陽は、私を好きだと言ってますが」
瞬間、目を丸くする二人の、驚きと、怒りと憐憫が交じり合ったような複雑な表情に、我に返る。
――……しまった。
そして、次には爆笑。
「何言ってんの、ありえないって‼ウソつくなら、もう少しマシなモンにしてよ!」
二人は、お互いに腹を抱えながら笑い転げる。
――ええ、自分でも、そう思うわよ。
――でも、事実なんだ。
けれど、反論できずに、唇を噛んで視線を下げる。
すると、ふわりとした感触に包まれた。
「――え」
それは――覚えのある。
「オレがコイツを好きなのは、本当だが?」
江陽が、そう言いながら、後ろから私を抱き締め、目の前の二人をにらみつける。
「え、ちょっと、マジ?!うわ、引く!」
「人の気持ちも考えられないお前等を選ぶ方が引くぞ」
「ハァ⁉何それ!」
二人は、真っ赤になってエレベーターに乗り込んで去って行く。
それを見送ると、江陽は、はあ、と、私の肩口に顔をうずめた。
「ちょっ……江陽!」
「――……助かった……」
絞り出すような声に、ヤツが震えているのに気づき、私は、その腕にそっと触れる。
「……アンタ、ホントに女嫌いなのね」
「――……ああ。筋金入りだ」
「当てこすらないでよ」
「別に。――もう、半分、条件反射なんだよ」
「聖が、お友達に聞いたって言ってたわ。昔、ひどい目に遭ったようね」
「うるせぇよ。思い出したくもねぇ」
そう言って、江陽は、私をのぞき込むと、口元を上げた。
「――で、何で、赤の他人にオレの気持ちバラしてんだ、テメェ?」
「……え、あ、っと……」
その言葉に、先ほどのやり取りを思い出し、固まってしまう。
「――……つい……?」
「じゃあ、責任取れよ?」
「え?」
私が顔を向けると同時に、軽くキスをされる。
「――……っ……こっ……!」
そして、ヤツは、私から一旦離れると、自分の胸へと引き込んだ。
「江陽!」
慌てて離れようとするが、力に関しては分が悪い。
私は、どうにか、腕を間に入れようとするが、そんな隙間も無かった。
「――やっと、信じたか」
「……っ……!」
江陽は、私を抱き締めたまま、耳元で囁く。
「オレが、お前が好きだって」
「え、あ、それは――……何というか……言葉のあや、的な……?」
身をよじりながら答えると、江陽は、はああ、と、うなだれた。
「何だよ、そりゃ」
「だ、だって、腹立ったんだもの。――アンタの気持ちなんて、考えてなかったから……」
「――……そうか」
「……そうよ。たとえ、好きな相手でも、やっちゃいけない事でしょう」
恋愛なんて経験も無い私が言う事でもないだろうけれど、少なくとも、人間関係とするなら、それは、当然の事。
相手が嫌がる事をしない、なんて、子供でも理解できる。
江陽は、そう続けた私を離し、クスリ、と、微笑む。
「――やっぱり、うーちゃんはうーちゃんだな」
顔を上げ、その表情を至近距離で見てしまった私は、思わず、固まってしまった。
「……うるさい……こうちゃん……」
昔を思い出し、苦りながらも――胸の奥が満たされてしまう。
そんな自分を、どうしたら良いのか、わからなかった。
「は?何で、アンタにそんなコト言われないとなんです?」
私をにらみつける女性の腕を、もう一人が引くと、何かを耳うちする。
そして、わかったように笑われた。
「ああ、そっかぁ。久保聖の引き立て役だったねー」
「――それが何か」
そんな風に言われようが、事実なのだ。否定する気も、怒る気もしない。
平然と返すと、予想外だったのか、彼女たちは更に続ける。
「もう、三ノ宮クンはフリーなんだから、誰が行ったってかまわないでしょ」
「先日、彼は、あなた達から逃げていましたが?」
「はぁ⁉そんなの知らないけど?イケメン、彼氏にするチャンスなの。邪魔しないでよ」
――ああ、もう、こんな常識の無い人間と、同じ会社だなんて。
私はイラつきを抑えられず、吐き捨てるように言ってしまった。
「――その江陽は、私を好きだと言ってますが」
瞬間、目を丸くする二人の、驚きと、怒りと憐憫が交じり合ったような複雑な表情に、我に返る。
――……しまった。
そして、次には爆笑。
「何言ってんの、ありえないって‼ウソつくなら、もう少しマシなモンにしてよ!」
二人は、お互いに腹を抱えながら笑い転げる。
――ええ、自分でも、そう思うわよ。
――でも、事実なんだ。
けれど、反論できずに、唇を噛んで視線を下げる。
すると、ふわりとした感触に包まれた。
「――え」
それは――覚えのある。
「オレがコイツを好きなのは、本当だが?」
江陽が、そう言いながら、後ろから私を抱き締め、目の前の二人をにらみつける。
「え、ちょっと、マジ?!うわ、引く!」
「人の気持ちも考えられないお前等を選ぶ方が引くぞ」
「ハァ⁉何それ!」
二人は、真っ赤になってエレベーターに乗り込んで去って行く。
それを見送ると、江陽は、はあ、と、私の肩口に顔をうずめた。
「ちょっ……江陽!」
「――……助かった……」
絞り出すような声に、ヤツが震えているのに気づき、私は、その腕にそっと触れる。
「……アンタ、ホントに女嫌いなのね」
「――……ああ。筋金入りだ」
「当てこすらないでよ」
「別に。――もう、半分、条件反射なんだよ」
「聖が、お友達に聞いたって言ってたわ。昔、ひどい目に遭ったようね」
「うるせぇよ。思い出したくもねぇ」
そう言って、江陽は、私をのぞき込むと、口元を上げた。
「――で、何で、赤の他人にオレの気持ちバラしてんだ、テメェ?」
「……え、あ、っと……」
その言葉に、先ほどのやり取りを思い出し、固まってしまう。
「――……つい……?」
「じゃあ、責任取れよ?」
「え?」
私が顔を向けると同時に、軽くキスをされる。
「――……っ……こっ……!」
そして、ヤツは、私から一旦離れると、自分の胸へと引き込んだ。
「江陽!」
慌てて離れようとするが、力に関しては分が悪い。
私は、どうにか、腕を間に入れようとするが、そんな隙間も無かった。
「――やっと、信じたか」
「……っ……!」
江陽は、私を抱き締めたまま、耳元で囁く。
「オレが、お前が好きだって」
「え、あ、それは――……何というか……言葉のあや、的な……?」
身をよじりながら答えると、江陽は、はああ、と、うなだれた。
「何だよ、そりゃ」
「だ、だって、腹立ったんだもの。――アンタの気持ちなんて、考えてなかったから……」
「――……そうか」
「……そうよ。たとえ、好きな相手でも、やっちゃいけない事でしょう」
恋愛なんて経験も無い私が言う事でもないだろうけれど、少なくとも、人間関係とするなら、それは、当然の事。
相手が嫌がる事をしない、なんて、子供でも理解できる。
江陽は、そう続けた私を離し、クスリ、と、微笑む。
「――やっぱり、うーちゃんはうーちゃんだな」
顔を上げ、その表情を至近距離で見てしまった私は、思わず、固まってしまった。
「……うるさい……こうちゃん……」
昔を思い出し、苦りながらも――胸の奥が満たされてしまう。
そんな自分を、どうしたら良いのか、わからなかった。