大嫌い同士の大恋愛
「名木沢さん、良かったの、アレで?」
「――……良いんです」
窓側の二人掛けに陣取った私達は、座りながら小さく言葉を交わす。
片桐さんは、何か言いたげだったが、飲み込んでくれたようだ。
それに感謝しながら、私は、お弁当を開ける。
「いつもながら、綺麗なお弁当だね」
「……ありがとうございます。片桐さんも、いつも美味しそうですね」
食の話題になると、少しだけ気持ちが和らぐ。
彼も同じなのか、別の容器を取り出し、私と彼の間に置くと、フタを開けた。
中には、鶏肉を焼いただけのもの。
それが、一口大に切られていた。
「片桐さん、コレは?」
「試作品、少しだけもらってきたんだ」
「え」
片桐さんは、バッグから、サンプル、と、書かれた透明チャック袋の小さいものを取り出した。
「あ、もしかして、”今日の気分”の?」
「正解。一応、第一弾の五種類」
そう言って、一つを開けると、鶏肉に振りかける。
「どうぞ」
「い、いただきます」
私は、それを箸に取ると、恐る恐る口に入れた。
第一弾とあって、ベーシックに七味。
「プラスで、ゆずとか、更に辛くしたいなら一味もあるよ」
「え、じ、じゃあ……ゆず、で」
ゆず七味なら、物珍しくも無い。
けれど、微調整がきく分、自分の好みに変えられるのだ。
片桐さんは、ゆず、と、書かれた袋を手渡すと、ジッと私の反応を見るように見つめる。
「あ、あの……見られてると……」
「気にしないで?素直な反応が見たいだけだからさ」
「それが、恥ずかしいんですが」
「なら、尚のコト見たいかな?」
私は、クスクスと笑いながら言う片桐さんを、ジロリ、と、見やる。
「……あまり、感心しないご趣味ですね」
「慣れてくれると、ありがたいかな?」
開き直る彼を、若干あきれながらにらむと、私は、そのまま軽くゆずパウダーを鶏肉にふりかけて食べる。
「あ、ちょうどいい」
「ホント、美味しそうに食べるね、名木沢さんは」
「え」
不意打ちの言葉に、顔を上げると、優しい視線に絡めとられる。
「……あ、あの……」
片桐さんは、口元を上げると、自分の分に振りかけて食べた。
「うん、僕は、もう少し多くても良いかな」
「――コレが、メインのコンセプトですね」
「ちゃんと、形になってるね」
私は、満足そうにうなづく彼に、うなづいて返す。
――本当に、仕事に対しての姿勢は、尊敬できるし――好ましい。
けれど、それが、恋愛感情かというと、悩んでしまうのだ。
それから、いろいろと振りかけながら食べ、自分の分も食べ終えると、お腹がいっぱい。
――最近、私、食べ過ぎじゃない?
思わず、ギクリとしてしまう。
この前の江陽とのお見合いの時も、食べ過ぎだったかもしれないのに。
そう思い出すと、胸が少しだけ痛い。
――結局、私は、アイツには、応えられない。
――それが、現実なんだ。
「――……良いんです」
窓側の二人掛けに陣取った私達は、座りながら小さく言葉を交わす。
片桐さんは、何か言いたげだったが、飲み込んでくれたようだ。
それに感謝しながら、私は、お弁当を開ける。
「いつもながら、綺麗なお弁当だね」
「……ありがとうございます。片桐さんも、いつも美味しそうですね」
食の話題になると、少しだけ気持ちが和らぐ。
彼も同じなのか、別の容器を取り出し、私と彼の間に置くと、フタを開けた。
中には、鶏肉を焼いただけのもの。
それが、一口大に切られていた。
「片桐さん、コレは?」
「試作品、少しだけもらってきたんだ」
「え」
片桐さんは、バッグから、サンプル、と、書かれた透明チャック袋の小さいものを取り出した。
「あ、もしかして、”今日の気分”の?」
「正解。一応、第一弾の五種類」
そう言って、一つを開けると、鶏肉に振りかける。
「どうぞ」
「い、いただきます」
私は、それを箸に取ると、恐る恐る口に入れた。
第一弾とあって、ベーシックに七味。
「プラスで、ゆずとか、更に辛くしたいなら一味もあるよ」
「え、じ、じゃあ……ゆず、で」
ゆず七味なら、物珍しくも無い。
けれど、微調整がきく分、自分の好みに変えられるのだ。
片桐さんは、ゆず、と、書かれた袋を手渡すと、ジッと私の反応を見るように見つめる。
「あ、あの……見られてると……」
「気にしないで?素直な反応が見たいだけだからさ」
「それが、恥ずかしいんですが」
「なら、尚のコト見たいかな?」
私は、クスクスと笑いながら言う片桐さんを、ジロリ、と、見やる。
「……あまり、感心しないご趣味ですね」
「慣れてくれると、ありがたいかな?」
開き直る彼を、若干あきれながらにらむと、私は、そのまま軽くゆずパウダーを鶏肉にふりかけて食べる。
「あ、ちょうどいい」
「ホント、美味しそうに食べるね、名木沢さんは」
「え」
不意打ちの言葉に、顔を上げると、優しい視線に絡めとられる。
「……あ、あの……」
片桐さんは、口元を上げると、自分の分に振りかけて食べた。
「うん、僕は、もう少し多くても良いかな」
「――コレが、メインのコンセプトですね」
「ちゃんと、形になってるね」
私は、満足そうにうなづく彼に、うなづいて返す。
――本当に、仕事に対しての姿勢は、尊敬できるし――好ましい。
けれど、それが、恋愛感情かというと、悩んでしまうのだ。
それから、いろいろと振りかけながら食べ、自分の分も食べ終えると、お腹がいっぱい。
――最近、私、食べ過ぎじゃない?
思わず、ギクリとしてしまう。
この前の江陽とのお見合いの時も、食べ過ぎだったかもしれないのに。
そう思い出すと、胸が少しだけ痛い。
――結局、私は、アイツには、応えられない。
――それが、現実なんだ。