大嫌い同士の大恋愛
18.結婚前提なんて、聞いてもいないんですが⁉
翌朝、よろよろと、いつもの時間に起き出し、洗面所に入る。
すると、昨日の痕が、くっきりと赤く浮き上がっていた。
「……マズいわね……」
さすがに、これを晒して出勤する勇気は無い。
アレコレ冷やしたり、温めたりとしてみるが、一向に消える気配も無く。
私は、時計を見やると、大きくため息をつき、スマホを持つ。
――助けてもらえるかしら。
送って五分ほど後、インターフォンが連打され、急いでドアを開けた。
「聖!朝っぱらから、やめないさい!」
「だって、羽津紀、助けてって……」
半泣きになりながら、部屋に入って来た聖は、私の首元に視線を移した。
「……羽津紀、首……」
「ええ。――さすがに、コレばっかりは、どうにもできなくて。――まったく、本当に、こんな事になるなんて思わなかったわ」
平然と言う私に、聖は眉を下げた。
「だから、警察に行こうよー」
「それだけは無理。アンタも、明日から無職は嫌でしょう」
「そんなに早くはつぶれないよー」
若干的外れでもない事を言いながら、聖は私の首元をまじまじと見つめる。
「痛くない?」
「ええ、まあ。でも、痕だけは、何とか隠したいのよ」
彼女は、納得しきれない表情を見せるが、それをスルーし、冷蔵庫から作り置きの煮物とご飯を取り出して、レンジに入れる。
「報酬は、朝ごはんでどうかしら」
「そんなの必要無い――けど、食べたい」
そう言って聖は、テーブルを拭いて待機。
その間に、スマホで何かを見続けている。
十分ほどで出来上がったものを並べ、二人で手を合わせて食べ始めると、聖がスマホの画面を私に見せた。
「あのさ、羽津紀、こういうの苦手?」
「え?」
視線を向ければ、そこには、首元を隠すようなスカーフの巻き方の数々。
これなら、痕は隠れるだろう。
「でも、私、そんなスカーフとか持ってないけど」
「アタシが貸すよ!」
聖は、どこか切羽詰まったような表情で、私を真っ直ぐに見る。
「――まあ、アンタなら、間違いないでしょ。……任せるわ」
「うん!」
勢いよくうなづいた聖は、今までで最速でご飯を食べ終え、自分の部屋に戻って行く。
そして、支度を整えていると、再び同じ勢いで部屋にやって来た。
「……アンタ、少しは落ち着きなさいな」
「でも、時間かかると悪いし!」
いつもの甘えた口調はどこへやら。
必死な表情の聖は、私をベッドルームに引きずって行き、クローゼットを開けた。
「ちょっ……聖⁉」
さすがに、そこは許した覚えはないが、本人は動揺する私に目もくれず、目の前の地味な服のラインナップを、じっと見つめる。
「――ええっと、コレと、コレならイケそうかな」
そして、パパッと、ハンガーにかけていた服を取り出すと、私を振り返った。
「羽津紀、今日は、こっちで行こう!それ、脱いで!」
「え、え??」
聖の勢いに押され、私は、素直に手渡されたものに着替える。
その間に、彼女は、自分のメイク道具をベッドの上に広げた。
「今日は、アタシが全部やるからね!」
「……アンタ、どうしたのよ……?」
「絶対、あの女に、後悔させてやるんだから!」
「……聖??」
何か、よくわからない方向に燃えている彼女に、私は、少しだけ怯えながら、されるがままになったのだった。
すると、昨日の痕が、くっきりと赤く浮き上がっていた。
「……マズいわね……」
さすがに、これを晒して出勤する勇気は無い。
アレコレ冷やしたり、温めたりとしてみるが、一向に消える気配も無く。
私は、時計を見やると、大きくため息をつき、スマホを持つ。
――助けてもらえるかしら。
送って五分ほど後、インターフォンが連打され、急いでドアを開けた。
「聖!朝っぱらから、やめないさい!」
「だって、羽津紀、助けてって……」
半泣きになりながら、部屋に入って来た聖は、私の首元に視線を移した。
「……羽津紀、首……」
「ええ。――さすがに、コレばっかりは、どうにもできなくて。――まったく、本当に、こんな事になるなんて思わなかったわ」
平然と言う私に、聖は眉を下げた。
「だから、警察に行こうよー」
「それだけは無理。アンタも、明日から無職は嫌でしょう」
「そんなに早くはつぶれないよー」
若干的外れでもない事を言いながら、聖は私の首元をまじまじと見つめる。
「痛くない?」
「ええ、まあ。でも、痕だけは、何とか隠したいのよ」
彼女は、納得しきれない表情を見せるが、それをスルーし、冷蔵庫から作り置きの煮物とご飯を取り出して、レンジに入れる。
「報酬は、朝ごはんでどうかしら」
「そんなの必要無い――けど、食べたい」
そう言って聖は、テーブルを拭いて待機。
その間に、スマホで何かを見続けている。
十分ほどで出来上がったものを並べ、二人で手を合わせて食べ始めると、聖がスマホの画面を私に見せた。
「あのさ、羽津紀、こういうの苦手?」
「え?」
視線を向ければ、そこには、首元を隠すようなスカーフの巻き方の数々。
これなら、痕は隠れるだろう。
「でも、私、そんなスカーフとか持ってないけど」
「アタシが貸すよ!」
聖は、どこか切羽詰まったような表情で、私を真っ直ぐに見る。
「――まあ、アンタなら、間違いないでしょ。……任せるわ」
「うん!」
勢いよくうなづいた聖は、今までで最速でご飯を食べ終え、自分の部屋に戻って行く。
そして、支度を整えていると、再び同じ勢いで部屋にやって来た。
「……アンタ、少しは落ち着きなさいな」
「でも、時間かかると悪いし!」
いつもの甘えた口調はどこへやら。
必死な表情の聖は、私をベッドルームに引きずって行き、クローゼットを開けた。
「ちょっ……聖⁉」
さすがに、そこは許した覚えはないが、本人は動揺する私に目もくれず、目の前の地味な服のラインナップを、じっと見つめる。
「――ええっと、コレと、コレならイケそうかな」
そして、パパッと、ハンガーにかけていた服を取り出すと、私を振り返った。
「羽津紀、今日は、こっちで行こう!それ、脱いで!」
「え、え??」
聖の勢いに押され、私は、素直に手渡されたものに着替える。
その間に、彼女は、自分のメイク道具をベッドの上に広げた。
「今日は、アタシが全部やるからね!」
「……アンタ、どうしたのよ……?」
「絶対、あの女に、後悔させてやるんだから!」
「……聖??」
何か、よくわからない方向に燃えている彼女に、私は、少しだけ怯えながら、されるがままになったのだった。