大嫌い同士の大恋愛
「おはよう、名木沢さん――……」
マンションを出ると、門のところで待っていた片桐さんが、私を見るなり固まった。
「おはようございます、片桐さん!今日は、アタシのプロデュースでーす!」
ニコニコと自慢するように、私を彼の目の前に差し出した聖は、後ろにいた江陽を振り返った。
「お二人とも、コレが、羽津紀の実力ですよー?下手な駆け引きとか、意地とか、早目にやめておかないと、本当に別の誰かに取られちゃうかもー」
聖は、そう言って、私の腕に自分の腕を絡ませ、目を丸くした二人を置き去りにして歩き出す。
「ちょっ……聖!何言ってるのよ、アンタは」
「だって、二人とも、見ててイライラするんだもん。羽津紀が、あんな目に遭って、アタシ、考え変わったの」
「え?」
――どういう事?
聖の腕を外し、彼女を見上げる。
すると、珍しく真剣に返された。
「アタシを大事にしてくれている羽津紀には、アタシも同じくらいに返したい。――親友だもん」
「聖……?」
「だから、羽津紀が、一番幸せだと思える相手じゃなきゃ、アタシが許さないから」
「ちょっと……アンタ、どうしちゃったのよ」
いつもの、フワフワとユルいアンタは、どこ行ったの。
聖は、口元を引くと、私の首元に視線を向けた。
「――こんな風に、突然、いわれのない事で傷つけられて――一歩間違えたら、羽津紀、死んじゃったかもしれなかったって思ったら――急に、怖くなったの」
「――聖……」
私は、聖を見上げる。
――今まででは、考えられないほど真剣な、真っ直ぐな視線。
「だから、後悔しないように、アタシは、大事な人を大事にしたいって思ったの」
その強い言葉に、それだけ、彼女が本気なんだと思い知る。
「……そう……そうね……。――ありがとう」
「うん!」
聖は、すぐに、いつものような綺麗な微笑みでうなづく。
そして、後ろから私達の会話を聞いていたのか、複雑な表情でうかがっている江陽と片桐さんを振り返ると、ビシ、と、指を差した。
「だから!二人とも、アタシが認めなかったら、羽津紀のカレシになんて、なれないと思ってよ!」
「――えっと、久保さん、僕、既に彼女の恋人だけど?」
苦笑いで言う片桐さんを、聖はにらみつける。
「そんなの、信じてないですよー?羽津紀のコトです、どうせ、アタシに気を遣って、恋人のフリしてくれとか言ったってところでしょう?」
「ひ、聖」
私は、ギクリ、と、肩を上げると、片桐さんに視線を向ける。
彼は、苦笑いでうなづいた。
「当たらずとも遠からず、かな。――でも、少なくとも、僕は、フリじゃないから」
すると、驚いたように、江陽が片桐さんに視線を向けた。
「宣言しても良いよ。――僕は、名木沢さんと、結婚を前提に付き合ってるつもりだから」
マンションを出ると、門のところで待っていた片桐さんが、私を見るなり固まった。
「おはようございます、片桐さん!今日は、アタシのプロデュースでーす!」
ニコニコと自慢するように、私を彼の目の前に差し出した聖は、後ろにいた江陽を振り返った。
「お二人とも、コレが、羽津紀の実力ですよー?下手な駆け引きとか、意地とか、早目にやめておかないと、本当に別の誰かに取られちゃうかもー」
聖は、そう言って、私の腕に自分の腕を絡ませ、目を丸くした二人を置き去りにして歩き出す。
「ちょっ……聖!何言ってるのよ、アンタは」
「だって、二人とも、見ててイライラするんだもん。羽津紀が、あんな目に遭って、アタシ、考え変わったの」
「え?」
――どういう事?
聖の腕を外し、彼女を見上げる。
すると、珍しく真剣に返された。
「アタシを大事にしてくれている羽津紀には、アタシも同じくらいに返したい。――親友だもん」
「聖……?」
「だから、羽津紀が、一番幸せだと思える相手じゃなきゃ、アタシが許さないから」
「ちょっと……アンタ、どうしちゃったのよ」
いつもの、フワフワとユルいアンタは、どこ行ったの。
聖は、口元を引くと、私の首元に視線を向けた。
「――こんな風に、突然、いわれのない事で傷つけられて――一歩間違えたら、羽津紀、死んじゃったかもしれなかったって思ったら――急に、怖くなったの」
「――聖……」
私は、聖を見上げる。
――今まででは、考えられないほど真剣な、真っ直ぐな視線。
「だから、後悔しないように、アタシは、大事な人を大事にしたいって思ったの」
その強い言葉に、それだけ、彼女が本気なんだと思い知る。
「……そう……そうね……。――ありがとう」
「うん!」
聖は、すぐに、いつものような綺麗な微笑みでうなづく。
そして、後ろから私達の会話を聞いていたのか、複雑な表情でうかがっている江陽と片桐さんを振り返ると、ビシ、と、指を差した。
「だから!二人とも、アタシが認めなかったら、羽津紀のカレシになんて、なれないと思ってよ!」
「――えっと、久保さん、僕、既に彼女の恋人だけど?」
苦笑いで言う片桐さんを、聖はにらみつける。
「そんなの、信じてないですよー?羽津紀のコトです、どうせ、アタシに気を遣って、恋人のフリしてくれとか言ったってところでしょう?」
「ひ、聖」
私は、ギクリ、と、肩を上げると、片桐さんに視線を向ける。
彼は、苦笑いでうなづいた。
「当たらずとも遠からず、かな。――でも、少なくとも、僕は、フリじゃないから」
すると、驚いたように、江陽が片桐さんに視線を向けた。
「宣言しても良いよ。――僕は、名木沢さんと、結婚を前提に付き合ってるつもりだから」