大嫌い同士の大恋愛
昼休み、聖がお弁当を買う為にコンビニに向かうというので、先に休憩室に入ると、一斉に視線が向けられた。
私は、内心たじろぎながらも、平静を装い、空いている二人掛けを探そうと、部屋を見回す。
すると、視界の片隅に、見覚えのある女性の姿。
――昨日の――立岩さんだ。
同僚と、何事も無かったかのように、お弁当を開けている。
私は、一気に、呼吸ができなくなった。
通路の真ん中で足を止めてしまう。
周囲の怪訝な視線が向けられ始め、どうしたら良いのか、と、頭の中はパニックだ。
「羽津紀」
すると、肩が掴まれ、顔を上げると、険しい顔の江陽が視界に入った。
「――出るぞ」
「で、でも、聖が……」
「オレが連絡しておく」
「名木沢さん、どうかしたのかな?」
江陽と小声で話していると、それをのぞき込むように、片桐さんが顔を出した。
私達は、一瞬、ギクリと、顔を見合わせる。
「……いえ、大丈夫です……」
「でも、顔、真っ青だよ?具合い悪い?」
「――いえ、あの……」
私を心配してくれるのは、ありがたいけれど――。
どうしたら良いのか、迷っていると、江陽が手を取り、出入口へと歩き出した。
「――片桐班長、一緒に来てもらえますか」
「え、あ、良いけど……」
キョトンとしつつもうなづく片桐さんと、私、江陽は、休憩室を出ると、そのまま一階、人気の無いロビーへと下りていく。
「三ノ宮くん、どうかしたのかな。――羽津紀さん、何かあったんじゃない?」
江陽は、一瞬、握っていた手に力を込めるが、そっと離し、片桐さんを振り返った。
「あれ、羽津紀?……どうしたの、みんな揃って……」
すると、コンビニから帰ってきた聖が、自動ドアをくぐって来て目を丸くする。
「聖。――やっぱり、羽津紀、マズい」
「――え」
「呼吸困難みてぇなの起こしかけた。――休憩室に、あの女がいたせいだと思う」
「え!羽津紀、大丈夫⁉」
瞬間、私の肩を強い力で掴む。
そんな聖を見るのは初めてなのだろう――片桐さんが、驚いたように尋ねた。
「……何かあったのかな。……いや、羽津紀さん、何があったの」
「……あ、いえ、あの……」
――江陽のストーカーの女に、首を絞められました。
簡単に言える事ではないが、そうとしか言えない。
迷っていると、聖が、私と片桐さんの間に入り、強張った表情で言った。
「――昨日、羽津紀、殺されかけたんです。……人事のひとに」
「……え……は……??――え、ま、待って、何、どういう事?」
さすがに動揺を隠せない片桐さんは、片手で顔を隠しながら、頭の中を整理しようとする。
それを見やり、江陽が小声で事情を簡単に話した。
「……オレのストーカーみたいで……羽津紀を、敵視してしまって――……」
片桐さんは、江陽に鋭く視線を向ける。
「――キミのせいってコト?」
「――……そう思われても、弁解はしません。……ただ、オレ自身、まったく心当たりが無いんです」
「知らないところで、ストーカー化されたって?」
「……おそらく」
沈んだ江陽を見やり、片桐さんは、大きく息を吐いた。
「――ゴメン、頭が整理できない。今日、終業後、全員時間はあるかな?」
そして、終業後に事実のすり合わせをするため、四人で待ち合わせる事になったのだった。
私は、内心たじろぎながらも、平静を装い、空いている二人掛けを探そうと、部屋を見回す。
すると、視界の片隅に、見覚えのある女性の姿。
――昨日の――立岩さんだ。
同僚と、何事も無かったかのように、お弁当を開けている。
私は、一気に、呼吸ができなくなった。
通路の真ん中で足を止めてしまう。
周囲の怪訝な視線が向けられ始め、どうしたら良いのか、と、頭の中はパニックだ。
「羽津紀」
すると、肩が掴まれ、顔を上げると、険しい顔の江陽が視界に入った。
「――出るぞ」
「で、でも、聖が……」
「オレが連絡しておく」
「名木沢さん、どうかしたのかな?」
江陽と小声で話していると、それをのぞき込むように、片桐さんが顔を出した。
私達は、一瞬、ギクリと、顔を見合わせる。
「……いえ、大丈夫です……」
「でも、顔、真っ青だよ?具合い悪い?」
「――いえ、あの……」
私を心配してくれるのは、ありがたいけれど――。
どうしたら良いのか、迷っていると、江陽が手を取り、出入口へと歩き出した。
「――片桐班長、一緒に来てもらえますか」
「え、あ、良いけど……」
キョトンとしつつもうなづく片桐さんと、私、江陽は、休憩室を出ると、そのまま一階、人気の無いロビーへと下りていく。
「三ノ宮くん、どうかしたのかな。――羽津紀さん、何かあったんじゃない?」
江陽は、一瞬、握っていた手に力を込めるが、そっと離し、片桐さんを振り返った。
「あれ、羽津紀?……どうしたの、みんな揃って……」
すると、コンビニから帰ってきた聖が、自動ドアをくぐって来て目を丸くする。
「聖。――やっぱり、羽津紀、マズい」
「――え」
「呼吸困難みてぇなの起こしかけた。――休憩室に、あの女がいたせいだと思う」
「え!羽津紀、大丈夫⁉」
瞬間、私の肩を強い力で掴む。
そんな聖を見るのは初めてなのだろう――片桐さんが、驚いたように尋ねた。
「……何かあったのかな。……いや、羽津紀さん、何があったの」
「……あ、いえ、あの……」
――江陽のストーカーの女に、首を絞められました。
簡単に言える事ではないが、そうとしか言えない。
迷っていると、聖が、私と片桐さんの間に入り、強張った表情で言った。
「――昨日、羽津紀、殺されかけたんです。……人事のひとに」
「……え……は……??――え、ま、待って、何、どういう事?」
さすがに動揺を隠せない片桐さんは、片手で顔を隠しながら、頭の中を整理しようとする。
それを見やり、江陽が小声で事情を簡単に話した。
「……オレのストーカーみたいで……羽津紀を、敵視してしまって――……」
片桐さんは、江陽に鋭く視線を向ける。
「――キミのせいってコト?」
「――……そう思われても、弁解はしません。……ただ、オレ自身、まったく心当たりが無いんです」
「知らないところで、ストーカー化されたって?」
「……おそらく」
沈んだ江陽を見やり、片桐さんは、大きく息を吐いた。
「――ゴメン、頭が整理できない。今日、終業後、全員時間はあるかな?」
そして、終業後に事実のすり合わせをするため、四人で待ち合わせる事になったのだった。