雨をとじこめて
第一話
恋をしている。
叶うはずのない、片想いだけど。
この想いは、傘からポタポタと落ちていく、キラキラと輝く雨粒みたい。
いつの間にか足元に水たまりを作るように、私の想いは何粒も重なって、大きな恋心になった。
……雨の日に会える、あなたが好き。
「おーい、りんごー!」
放課後。
高校の駐輪場のそば。
頭上から私を呼ぶ声がして、傘を傾けつつそばに建つ校舎を見上げる。
二年C組の窓から顔を出している日菜乃と実乃理が、こちらに向かって手を振ってくれている。
「ねぇ、これからカラオケ行かなーい?」
私は傘を肩にかけ、空いた両手を合わせた。
「ごめーん! これから図書館!」
日菜乃は、
「あっ、そっか〜! わかった、また誘うねー!」
と言って、実乃理も、
「またねー!」
と、手を振ってくれた。
そう。
私は今日、図書館に行かなくてはいけない。
ってか、行きたい。
絶対に。
こんな雨降る日には、彼が図書館にやって来るから。
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